1.はじめに
2次元原子層材料は,原子が2次元面内で強く結合し配列した層状物質である1)。2次元面の結合を主とし,厚さが原子1層から数層といった特異な存在形態は,従来のバルク状物質には見られない特異な特性をもつ。近年では,次世代半導体材料として,活発に研究開発が行われている2)。
グラフェンは代表的な2次元材料であり,ハニカム状に結合した炭素原子からなる3)。グラフェンのバンド構造においては,ディラック点近傍で電子の運動量とエネルギーの分散関係は線形となるため,電子は見かけ上質量ゼロのディラック粒子として振る舞う。このような特異なバンド構造から,優れた物性が生み出される。特に,グラフェンの電荷移動度がシリコンの約10倍高いこと,紫外からテラヘルツ周波数領域におよぶ電磁波に対して,光電変換が可能であることがよく知られている4)。またグラフェンは製造上の環境負荷が低く,合成も低コストであるという利点ももつ。よってグラフェンは電子・光デバイス,特に光センサへの応用が期待されている。グラフェンの高い電荷移動度は高速な応答を可能にし,広帯域応答性は全ての光領域の電磁波の検出をグラフェン単体で可能にする。つまり,従来の光センサは検出波長が材料によって決定されていたが,理論上はグラフェンを用いればすべての波長の光をグラフェンで検出することが可能である。特に,赤外線波長域はグラフェンによるメリットが大きい。赤外線センサは,複雑かつ高価な化合物半導体によって検出する量子型と,中空断熱構造を有するボロメータ等の赤外線を熱に変換する熱型に大別できる。量子型は高性能であるが冷却が必要であるためコストが高く,熱型は性能に劣るものの,室温動作が可能でありコストが低いというように,両方式とも一長一短がある。グラフェンの優れた特性を応用することで,両方式の長所を併せ持つ高性能かつ低コストの赤外線センサの実現が期待できる。このような赤外線センサは社会インフラとしてより広く活用され社会の安全・安心が促進される5)。よって,我々は赤外線波長域を中心にグラフェンの応用を進めている。
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