1.はじめに
誘電体導波路型メタ原子を利用したメタサーフェスはここ数年で急激に応用展開・実用化が進んでいる。例えば,偏光分離メタレンズを用いた顔認証や,メタレンズアレイとライトフィールドカメラを組み合わせた深度センサー,波長分離メタレンズによるカラーソーティングを利用した高感度イメージセンサなどがその例である。2022年には,メタサーフェス光学素子を用いたTime of Flight(ToF)測距センサーが市場に登場し,実用化・商業化の時代に突入している。2024年に発売されたAppleのiPad Proではメタレンズを赤外線構造化照明に用いた小型の顔認証システムが搭載されている。
我々のグループでは近年,誘電体メタサーフェスに関する研究開発を進めている。特に可視光~近赤外領域において誘電体導波路構造に着目し,これを単位構造(メタ原子)として利用したメタサーフェスを開発してきている。本誌上でも,シリコン導波路型メタ原子を利用した回転型可変焦点メタレンズと偏光分離メタレンズや,赤・緑・青の各波長において動作する3種類のメタサーフェスからの投影像を重畳させることによるフルカラーホログラフィについて報告してきた。
誘電体導波路型メタサーフェスにおいては,アスペクト比の向上による位相遅延量の増大と,断面形状による分散制御とが,広帯域化のカギとなる。これは主としてメタレンズの色分散制御の文脈で議論されてきた。そして,色収差を抑制できるメタレンズの帯域幅と,レンズ直径,開口数(NA)などの性能指標にはトレードオフの関係があることが指摘され,可視光全域をカバーできるメタレンズの直径は数10μmから100μm程度にとどまっているのが実態である。
ところで,この色収差抑制の困難は,可視光域のすべての波長にわたって焦点距離を一定に保とうとする(すなわち,色収差を抑制しようとする)ために生じている。それに対し今回我々は,照明系に着目し,赤・緑・青の光の3原色に対応する離散的な3つの波長においてのみ位相分布の最適化を行うことで,図1のように位相分布を3波長で多重化した単一のメタサーフェスによってフルカラーのホログラフィ動画を再生することを試みた。クロストーク像の影響を抑える条件を見出すことで,再生速度5.6 frames per second(fps)でのフルカラー動画再生に成功したので報告する。
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