九工大ら,金属グラフェンナノリボンを部分半導体化

九州工業大学,北海道大学,大阪大学,千葉大学の研究グループは共同で,①2層カーボンナノチューブをアンジップして半金属性単層グラフェンナノリボン(sGNR)を安定的に得る方法を確立し,②得られたsGNRに平面分子ナノ粒子吸着し,吸着部分の周辺のみが半導体化することを明らかにした(ニュースリリース)。

グラフェンは,電子・ホールのキャリア移動度が既存の半導体材料に比べ格段に高いことが知られているが,グラフェンは半金属性であり,そのままではトランジスタなどの半導体材料の代替にはならないため,グラフェンを半導体にする手法が探索さてきた。

一方,研究グループは,ナノ電気配線の一部がナノデバイスになっている配線とデバイスが一体になった電子回路の重要性が増してくると考え,sGNRを利用すること,および,平面有機分子をsGNRに吸着させることにより半導体性を簡単に引き出すことができるかということに注目してきた。

特に有機分子を用いてsGNRの電気特性を変化させる取り組みは,これまで大きな成功はなかった。研究グループはアンジップ法を2層カーボンナノチューブ(DWNT)に施すことにより,これまでないクオリティの高いsGNRを得た。

さらに,得られたsGNRにナノ粒子を吸着させることによる電気物性の変化を調べたところ,sGNRの一部に有機平面分子のナノ粒子を吸着させ,その周辺のみが半導体化することを明らかにした。

これを利用することにより,将来,グラフェンナノ配線の一部を半導体化しデバイスとする,ナノ配線ナノデバイス一体構造の実現に道が開かれ,現状のCPUなどのナノデバイス回路のサイズを変えずにデバイスの性能を向上が期待される。

単層GNRの電流‐電圧(I-V)測定により,DWNTより得られたGNRは半金属性であることが分かっている。研究ではGNRをまずSi基板上に置き,キャスト法によりナフタレンジイミド(C15-NDI,以下NDI)分子溶液を滴下し,分子からなるナノ粒子をGNRに吸着させた。

トランジスタ測定の結果,分子吸着後のGNRはp型半導体特性を有することが分かった。NDIナノ粒子はグラフェン中の電子伝導を阻害するので,吸着時にはGNR中の電流の通り道が狭まり,グラフェンナノメッシュと同じネック効果(グラフェンが細くなるところで半導体化)が表れると考えられるという。

今回得られたGNRの電気特性の有機分子による制御テクニックは,金属性GNRの一部(ナノ粒子吸着部分付近)のみを半導体化できることから,将来ナノ配線デバイス一体構造を作製する上で非常に有用な手法になることが期待できるとしている。

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