筑波大ら,電子線CTの三次元再構成に必要な撮影枚数を1/10にするソフトウェアを製品化

筑波大学,九州大学,システムインフロンティアは,圧縮センシング法による画像再構成アルゴリズムを搭載した電子線CT(Computed Tomography:断層撮影)用ソフトウェアを開発し,製品化した(ニュースリリース)。

電子線CTは,透過型電子顕微鏡で得られる二次元画像をコンピュータで処理することで三次元化するCT(断層撮影)技術を応用して,ナノレベルの立体観察を行なうことを可能とした技術。同じ原理を応用した装置に,医療現場で使用されるX線CTがある。

電子線CTでは,ウイルスや分子構造といった小さな物体の三次元観察を行なうことができるため,材料科学や生命医科学の分野を中心に近年注目されてきた。

実際の電子線CTによる観察は,透過型電子顕微鏡内で試料を連続的に高角度まで傾斜させながら複数の透過像を連続して撮影し,これらの連続傾斜像をコンピュータ上で再構成(計算)し,立体的な三次元像を得る。通常は120枚以上の連続傾斜像が必要なため,1つの三次元像を得るのには30分から2時間という撮影時間を要し,動きのある物体・現象を観察できないという問題があった。

今回考案した新アルゴリズム「ISER,Iterative SEries Reduction」では,CS法で用いられる画像再構成の基準となる評価関数を高速に最適化する新理論に基づき,計算速度の大幅な向上,パラメータ設定の簡略化,数学的厳密性の全てを実現した。

これを,システムインフロンティア社のソフトウェア製品TEMography™に搭載することで,世界でいち早くCS画像再構成法の製品化に至った。

実際にISERを搭載したTEMography™を使って再構成されたFePtナノ粒子の三次元像を解析したところ,たった13枚の画像から高分解能の三次元像が得ることができた。研究グループでは,目指す構造変化のリアルタイム観察に大きく近づいたとしている。

このソフトウェアにより,三次元再構成に必要な撮影枚数を従来の1/10から1/20程度に減らすことが可能となり,撮影時間の短縮のみならず,電子線CT観察のネックとなっていた,電子線照射による試料の損傷や汚れの誘起といった問題の解決が期待されるという。