茨城大,銀河の運動が巨大分子雲の進化に及ぼす影響を解明

茨城大学は,近傍渦巻銀河M51の電波観測から,分子ガスの分布と運動を求め,渦状ポテンシャルが分子ガスの運動に大きく影響を及ぼしていることを明らかにした(ニュースリリース)。

銀河の形成や進化を理解するためには,星がどのように生成されるか明らかにすることが重要となる。特に太陽より8倍以上大きい大質量星はその最期に超新星爆発を起こし,周囲に膨大なエネルギーを与えるなど,銀河進化に大きな影響を及ぼす。このような大質量星は分子ガスの巨大な固まり(巨大分子雲)で生成されるので,大質量星形成そして銀河進化の理解には巨大分子雲の進化を理解する必要があった。

渦巻銀河では渦状ポテンシャルによって集められたガスが渦状腕で巨大分子雲,巨大分子雲複合体を形成し,大質量星が生成されると考えられている。また,渦状腕で生まれた大質量星はその強い紫外線で周囲ガスを電離するため,渦状腕間では分子雲はほとんど存在しないと考えられてきたが,最近の観測から渦状腕間にも巨大分子雲がみつかり,これらがどのように生成されたのか議論されていた。

今回の研究の結果,巨大分子雲複合体は分子雲衝突によって効率的に形成されること,さらに巨大分子雲複合体は渦状腕を通過する際に生じる複合体内部の速度勾配によって分裂し,渦状腕間に巨大分子雲として放出されることが分かってきた。

今後,南米チリで稼働を始めたアルマ望遠鏡を用いた観測によって,分子雲の分布と運動がより詳細に分かり,分子雲の進化がさらに明らかになることが期待されるとしている。

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