慶大と理研,SACLAのコヒーレントX線回折イメージングデータを高速処理するソフトを開発

慶應義塾大学,独立行政法人理化学研究所は共同で,X線自由電子レーザ(XFEL)を用いた非結晶粒子のコヒーレントX線回折イメージング実験データを,高効率で解析するソフトウェアを独自に考案・開発し,その実用化に成功した。

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慶大を中心とした研究グループは,低温試料固定照射装置“壽壱号“(ことぶきいちごう)を設計・製作し,2013年3月までに,XFELを用いた高効率な非結晶粒子の構造解析に有効なコヒーレントX線回折イメージング法(Coherent X-ray Diffraction Imaging:CXDI)実験を実現している。

壽壱号とSACLA の検出器グループが開発したマルチポートCCD(MPCCD)検出器二台を用いることで,数日間のビームタイム中に数万枚の回折パターンが得ることが可能になったが,このような膨大な枚数の回折パターンの処理が問題となっていた。これに対し,研究グループは,XFEL-CXDIでの実験装置の配置や特性を理解しながら,得られた回折パターンを高速かつ自動で処理することが可能な「四天王」を開発した。

「四天王」は,検出器の持つノイズを各回折パターンから引き去って十分な強度を持つものを抽出する「多聞天」,特徴的な形状を持つ試料の回折パターンから理論式を用いて検出器の幾何学的パラメーターを決定し,さらに,回折パターンの中心対称性を利用して,ショットごとに微小に搖動するビームの位置を精密化する「持国天」,二台の検出器のパターンを一つに統合する「広目天」,そして,統合パターンから電子密度像回復を行う「増長天」—のサブプログラム四つで構成されている。

このソフトウェアの整備により,ラスタースキャン測定終了後直ちに,像回復までの処理を自動で行なえるようになった。高計算コストのルーチンが並列化されているので,SACLAに設置されたスーパーコンピュータ上では回折パターン1000枚/15分で位相回復までの処理が可能となる。

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