産総研が開発したサブミクロン球状粒子の生成法と,その光学応用

量子ドット増感太陽電池への応用

こうして合成したサブミクロン球状粒子は光の波長に近いサイズであることから,光学応用が期待されている。産総研ナノシステム研究部門フィジカルナノプロセスグループ研究グループ長の越崎直人氏(現北大)らは石川氏と共同で,高屈折率の酸化チタンサブミクロン球状粒子を作製し,これを高効率光散乱性透過膜として利用することで,量子ドット増感太陽電池の光電変換特性を向上することに挑戦した。

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製作した量子ドット増感酸化チタン太陽電池断面とSEM写真(出展:産総研)

光増感型太陽電池の性能向上には,光吸収によって効率的にキャリアを生成させることが重要となる。しかし,これまでの量子ドット増感太陽電池の構造では,光の一部は量子ドットに十分に吸収されず,対電極に到達してしまうという問題があった。

研究グループは,粒子サイズを変化させることで散乱ピーク波長を制御できることを突き止め,平均サイズ483 nmの酸化チタン球状粒子を液中レーザ溶融法により生成した。これを散乱層として量子ドット増感太陽電池に導入し,光電変換特性が向上するかどうかを測定した。

酸化チタン球状粒子は,アセトン中に分散したアナターゼ相酸化チタン原料ナノ粒子に波長355 nmの非集光レーザ(133 mJ/pulse·cm2)を30分間照射することで得た。これを薄膜化した散乱層により,後方散乱された光が量子ドットに二次的に吸収されることを狙った。

その結果,光散乱層がある場合,変換効率が10%増加した。また,量子収率スペクトルを測定したところ,光散乱層がある場合は大きな量子収率を示し,特に赤外光領域にまで光電変換を示すようになった。これは酸化チタン球状粒子の広い波長範囲での光散乱に起因するものと考えられるという。