ミニインタビュー

道村先生に聞く
探究する楽しさが拓く,未知なる宇宙への道
─今回の研究を始めたきっかけを教えてください
高校生の頃に読んだ『自然界における左と右』が,研究の原点の一つです。素粒子の標準理論に含まれない重力に興味を持ち,重力波の研究へ進みました。ブラックホールや中性子星の合体で生じる重力波を捉える重力波望遠鏡「KAGRA」に参加し,レーザー干渉計による超高精度計測に取り組みました。ごくわずかな変動を捉えるこの技術はダークマター探索などにも応用できます。共同研究者と議論を重ね,アイデアを少しずつ形にしたことが,現在の研究につながっています。
─この研究の面白さとは
自分たちでアイデアを出して,装置を作って,実際に実験をするという一連の過程に面白さを感じますね。ダークマターなどの検出方法について,メンバーとともにアイデアを出し合い実験につなげていきます。すでに多くの研究者が研究している方法では,競争も激しくなります。少しでも自分たちのアイデアがあるとオリジナリティを出すことができ,自分たちのペースで進めることができるので楽しいです。
─研究を進める中で苦労していることは
研究そのものについてはあまり苦労だと感じていません。失敗しても,「次はどのように改善すればよいか」と考え試行錯誤するのが楽しいです。
研究の一連の流れはどれも楽しいですが,あえて挙げるなら物品の選定や発注は苦手です。レーザー光源一つでも,仕様,納期,予算の条件がそろわず,発注後に遅延や仕様違いが起こることもあります。業者との調整は大変ですが,苦労を経て装置が完成し,実験が動き出した瞬間の達成感は,何にも代えがたいものです。
─どのように応用されることを期待しますか
宇宙に関する研究は基礎研究ですので,現在の研究が直接どのように社会の役に立つのかは,あまり明確には考えていません。むしろ,重力波の実験からダークマターの研究へとつながったように,ある実験や計測技術が実現したことで,「次はこの現象も調べられるのではないか」と研究が広がっていくことに魅力を感じています。
その過程が結果として社会的に重要な技術へ発展したらとてもうれしいです。
─若手研究者が置かれている状況について
若手研究者を取り巻く環境には課題もありますが,研究分野やキャリアの選択肢は広がっており,若手向けの研究費や支援制度も充実しています。こうした制度は待つのではなく,自ら探して挑戦することが大切です。SNSのネガティブな情報だけで判断せず,自分の経験や周囲との対話を大切にしてほしいと思います。
─若手や学生に向けてメッセージをお願いします
最近,学生と話していると,進路について悩んでいる人が多いと感じます。選択肢や得られる情報が増えた分,悩む機会も増えたのかもしれません。しかし,情報を集めても未来を正確に予測することはできません。だからこそ,周囲の情報だけでなく,自分で見て,聞いて,感じたことを大切にし,自分で自分の道を選んでほしいと思います。悩みすぎず,自分の五感を信じて,お互い頑張っていきましょう。
(聞き手:望月あゆ子)
みちむら ゆうた
所属:東京大学 大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 准教授・博士(理学)
2015年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程中退。同年,東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助教。2022年カリフォルニア工科大学LIGO研究所リサーチ・サイエンティストを経て2024年より現職。令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞など受賞。
趣味:サンドイッチ作り,子どもと博物館に行くこと
(月刊OPTRONICS 2026年9月号)





