
ディープテックに注目が集まっている。ディープテックとは「科学的な発見や革新的な技術に基づいて,世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み」であり,実現できれば「国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決など社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術」を指す。このディープテックにおいて,光技術を用いたベンチャーが増えている。
具体的にはレーザー核融合を目指すEX-fusionや,光量子コンピューターを開発するOptQC,量子インターネットの社会実装を狙うLQUOM,東京科学大学の認定ベンチャーの第1号となるダイヤモンド量子センサーのQuantum Zero,注目を集めるペロブスカイト太陽電池のエネコートテクノロジーズといったベンチャーがそれで,いずれもここ数年に設立されている。
ベンチャーと言えばIT系のイメージが強い中,基礎から技術を積み上げて実際に製品として形にしようとする起業は技術立国日本の復活を思わせるもので,大いに歓迎するとともに,若き経営者の志を応援したい。だが一方で,ベンチャーに対する日本と海外とのファンドの規模や考え方の違いや,経営を支える国家レベルでの取り組みの不足が,こうした動きを鈍らせないか不安も残る。

例えばOptQCは今年1月に6.5億円の資金調達を発表している。同社は国からの支援も受けており,合計で10億円程度の資金を得ているとのことだが,同じく光量子コンピューターを開発するカナダのXanaduはシリーズBラウンドとCラウンドで2億ドル(約250億円※当時)の資金調達を行なっているほか,米PsiQuantumはシリーズCラウンドとDラウンドで約13億ドル(約2,000憶円)を得ている。
ディープテックは開発から商用化までに10年単位の時間が必要であることから,出資側も長い目で見守る覚悟が必要だ。しかし日本のスタートアップに供給される資金では,ビジネスの継続にいち早い売上が必要で,妥協や打算による場たり的な経営を生む素地とならないか懸念される。日本でも欧米並みの投資を実現するとともに,政府によるさらなる支援がディープテックのみならず,日本の産業の将来をも左右するだろう。【デジタルメディア編集長 杉島孝弘】