電気通信大学・教授の中村淳氏と日亜化学工業の市川諒英氏らの共同研究グループは、軽元素を主体とした新しい固体電解質材料「RbLi(Li₃SiO₄)₂」を合成し、そのリチウムイオン伝導特性と伝導機構を解明した(ニュースリリース)。従来の代表的な酸化物固体電解質と比べて約46%軽量で、全固体電池の軽量化や高速充電につながる新たな材料設計指針を示した。

現在のリチウムイオン電池は、可燃性の液体電解質を使用しているため、安全性の向上が課題となっている。この電解質を固体材料に置き換える全固体電池は、安全性や急速充電性能の向上が期待されている。特に酸化物系固体電解質は大気中で扱いやすい一方、ランタンやジルコニウムなどの重い元素を含む材料では、電池の軽量化に制約があった。
研究グループは、「UCr₄C₄型」と呼ばれる結晶構造を持つRbLi(Li₃SiO₄)₂に着目した。この材料の理論密度は2.74g/cm³で、代表的な酸化物固体電解質であるガーネット型Li₇La₃Zr₂O₁₂の約5.12g/cm³に比べて約46%低い。固相反応法で多結晶粉末と焼結ペレットを合成し、実験による評価に加えて、第一原理計算とニューラルネットワーク分子動力学シミュレーションを用いて、結晶内部でのリチウムイオンの移動を解析した。
その結果、結晶の一方向に形成されたトンネル状のリチウムイオン伝導経路が互いに連結し、三次元的な伝導ネットワークを構成していることが分かった。また、結晶内のすき間に存在するリチウムイオンは、周囲のイオンとの電気的な反発によって押し出されるように移動し、その際のエネルギー障壁は0.30eVと低いことを確認した。
一方、現状の材料のリチウムイオン伝導度は150℃で2.9×10⁻⁸S/cmにとどまる。これはイオン自体が移動しにくいためではなく、移動に必要な結晶欠陥の形成に1.26eVという比較的大きなエネルギーを必要とすることが主な要因と分かった。
この結果から、リチウムを過剰に含む組成に調整することで、イオン伝導度を向上させられる可能性が示された。なお、RbLi(Li₃SiO₄)₂はLED用緑色蛍光体の母体材料としても期待されている。今回の研究では、こうした発光材料としての可能性に加え、固体電解質としての新たな機能が明らかになった。
今後はリチウム量の最適化や、焼結体の緻密性を高める製造プロセスの改良を進め、軽量で安全性の高い全固体電池への応用を目指す。





