ヒトへの応用に関してですが,タンパク質発現と光導入が問題となりそうです。ですが,いつかは事故などに遭った患者さんを助けたいと思います。記憶に障害を負った方にオプトジェネティクスを使えば,ひょっとしたら,利根川先生の研究みたいに記憶を回復させることができるかもしれません。アルツハイマーの患者さんの記憶を呼び起こしてあげるだとか,他にも例えば,すい臓でインスリンの出が悪くなっている患者さんに使えば,ひょっとしてインスリンが出るようになるかもしれません。
臓器に埋め込み型で入れておいて,血中をオンラインでセンシングできるようにしておけば,出が悪くなった時に光を当てて,臓器からそういったものがよく出るようになるだとか。ひょっとしたら心臓も可能性はありますよね。心臓は筋肉ですけど,不整脈があったときに正常に戻すだとか,ペースメーカーの代わりにもなるかもしれないですね。そういったお手伝いができるかもしれません。
─研究にはどのような機材を使っていますか
数年前までは皆レーザーを使っていました。LEDの光量があまりなかったからです。ただ,今はLEDの光量がだいぶ上がってきたので,わざわざ高いレーザーではなくLEDを使っています。コヒーレンスも無くてもいいので。僕らの場合,基本的に調べるのは動物の大脳新皮質ですから,脳表にペタッと置くだけです。脳の深いところをターゲットにしている人は,そこまで届かせるために細い光ファイバーを使っています。あとは動物がクルクル回転してもいいようなスイベルとかです。
LEDは波長別に使います。活性化させたいときは,青に吸収の波長を持っているタンパク質が多いので青を使います。抑制系はどちらかというと長波長側なので,緑からオレンジまでです。
あるタンパク質はその活動を2色の光でオンオフできます(例えば青でオン,オレンジでオフ)。そういうときはあらかじめ光源を2つ用意しておいて,それぞれの色でオンオフの操作をします。ただ,あまりスペクトルが広すぎるとすそ野の方でかぶっちゃうこともあるので,そう意味ではまるっきりレーザーを使っていないわけではないです。
あと,今使っているのはワイヤレスの光刺激装置です。これは本当に便利です。バイオリサーチセンターという日本の会社が作っているものですけど,赤外線でLEDをオンオフできます。リモコン感覚で使えるので,動物が動きまわる実験には便利です。
─光製品に対する要望はありますか
基本的には光を当てること自体は実はそれほど大変じゃありません。LEDでも輝度が安定さえしていればそんなに難しくありません。ファイバーもマルチモードファイバーで大丈夫です。レーザーは安ければありがたいですけれども。出力もそんなに強いのは要りません。レーザーポインターくらいで十分です。
ただ,皆さん,オプトジェネティクスは敷居が高いと思っているようです。生理学者や薬理学者には「私,光について全然知りません」って方が中にはいます。光ファイバーもNAがあって,LEDとの接合はどうしたらいいのか等,そういったことが敷居を高くしています。やってみれば案外できちゃうんですけどね(笑)。光遺伝学は脳だけでなく,免疫や肥満や臓器をターゲットにすることができます。相当な研究者数が光遺伝学の利点を利用することができると思います。そういった人たちでも手軽に使える機器があると良いですね。
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150522_1/
2)理研プレスリリース「睡眠不足でも脳への刺激で記憶力がアップ」
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160527_1/
3)Optogenetics: 10 years after ChR2 in neurons–views from the community.
Nat Neurosci. 2015 Sep;18 (9):1202-12. doi: 10.1038/nn.4106.
(月刊OPTRONICS 2016年8月号)







