東北大,採血せず中赤外光を用い血液中の成分を推定

東北大学の研究グループは,中赤外光を用いた光音響分光法(PZT-PAS)を応用し,血液採取を伴わない血液成分推定技術を開発した(ニュースリリース)。

血液検査では血中コレステロールや血糖値など健康管理のために重要な成分量がわかる。しかし,そのためには採血が必要であり,検査には時間も費用もかかるため,通常は年に一回程度の定期健診でしかその結果を知ることはできない。

さまざまな波長の光を使う方法があるが,それらのうち,中赤外光という波長の長い光は,タンパク質,脂質や糖といった血液中に含まれる分子に強く吸収されるため,この中赤外光を用いることにより精密な成分分析が可能となる。

しかし,中赤外光は生体に多く含まれる水分にも吸収されるために,光を生体表面にあてて,その反射光を検出する方法では,表面から10ミクロン以下の浅い部分しか測ることができない。そのためこの方法では皮膚の表面にある厚さ10~20ミクロンの角質層の下にある血液成分を検出することはできなかった。

研究グループは,量子カスケードレーザー(QCL)という中赤外光源を数百キロヘルツという高い周波数で変調して,生体の表面に照射した。当てる光のパワーは数ミリワットと微弱なため,被験者は熱を感じることも,火傷などを引き起こすこともない。

吸収された光は熱になり,それによって生体組織が速いスピードで膨張と収縮を繰り返す。これが超音波となって生体組織の中を伝搬するため,この超音波を表面に設置したPZTと呼ばれる超音波圧電素子で検出することが可能。

この手法では,中赤外光は往きだけの片道で済むため,光だけを使って往復させる従来手法と比べて,20~30ミクロンといったより深い部分の成分検出が可能になり,角質層の下にある血液成分の分析が可能となる。

しかし,発生する超音波はきわめて微弱なため検出に十分な感度を得るのは困難だった。そこで試料の厚さを2~3ミリと薄くすることにより,試料の厚さ方向に定在波を生成して得られる超音波信号を大きく増強させることに成功した。

人間を対象とした実験では,厚さが2~3ミリの親指と人差し指の間の指間膜を対象に測定を行なった。実験ではレーザー光の波長を変化させながら超音波強度スペクトルを取得すると同時に,採血により血糖値を測定した。得られたスペクトルから,血糖値が140mg/dLより高いか低いかを推定した結果,85.3%という高い精度での分類に成功した。

研究グループは,この手法は,血糖値をはじめとするさまざまな血液成分を日常的にモニタリングすることが可能となることが期待されるとしている。

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