九州大学,分子科学研究所,総合研究大学院大学,理化学研究所は,対称性の高い典型金属アルミニウム(III)二核錯体の励起状態における,ヤーン・テラー歪みによる対称性の破れを,超高速分光による実時間での分子振動の観測を通じて世界で初めて実証した(ニュースリリース)。
分子材料の光機能は,分子の構造や対称性と密接に関係している。中でも,光励起によって分子の対称性が変化する現象が,光物理特性にどのような影響を与えるのかという課題は,近年注目されつつある。
しかしこのような励起状態における対称性変化と光機能の関係は,主に遷移金属錯体を対象とした研究例に限られており,持続可能な社会を実現するために重要な典型元素錯体ではこれまで十分に解明されていなかった。
研究グループは,三重らせん構造を有する高対称性のアルミニウム(III)二核錯体に着目した。この錯体は,3枚のπ共役配位子が2つのアルミニウム(III)イオンにD3対称に配位するユニークな構造を有す。
これにより,吸収スペクトルから大きく長波長側にシフトした発光スペクトルを示しながら高い発光量子収率を持つという特異な光物性を示すが,これが励起状態での構造変化や電子状態の変化とどのように関連しているのかを解明することは,光機能性材料設計において非常に重要となる。
光励起に伴う分子の構造変化を詳細に観測・解析するため,10フェムト秒の励起パルスを用いた超高速分光と量子化学計算を組み合わせて計測を行なった。その結果,光励起に伴って一部の配位子が平面化する構造変化が,分子全体の対称性がD3からC2へと変化するヤーン・テラー歪みと強く結合していることが明らかになり,電子状態の特定の配位子への局在化も実証した。
こうして研究グループは,ヤーン・テラー歪みによる対称性の破れを,超高速分光による実時間での分子振動の観測を通じて世界で初めて実証した。
研究グループは,今回解明された励起状態における対称性破れ,およびその光物性との相関は,アルミニウムのような地球豊富元素を活用した持続可能な光機能材料の設計にとって極めて重要な知見であり,次世代の高性能・高効率な発光材料や光電変換材料の開発へとつながることが期待されるとしている。
