東北大,熱伝導を電気で制御する手法を開発

東北大学は,スピン熱伝導物質であるマグノンと呼ばれる特殊な粒を用いた熱流の新しい制御法を提案し,その実証に成功した(ニュースリリース)。

小型化・集積化が進む電子機器の熱マネジメントは,今後益々困難になることが予想されている。一方,熱は貴重なエネルギー資源と見ることもできる。研究グループでは熱をもっと自由に操作できる“熱制御回路”の創出を目指した研究を進めてきた。それらの材料にはスピン熱伝導物質が用いられ,異方的な高熱伝導性というスピン熱伝導物質の特徴が生かされている。

一方今回,スピン熱伝導物質のもうひとつの特徴である“熱伝導率の制御性”に着目した。これは熱キャリアがマグノンという特殊な粒であり,その移動は障害物(ホール)によって邪魔されることに由来している。つまり,スピン熱伝導を邪魔するホールを電圧印加によって意図的に用意してやり,熱伝導を動的に制御するとした。

La5Ca9Cu24O41(LCCO)単結晶は室温においても金属に匹敵するスピン熱伝導を示すことが知られている。今回はその集合体である多結晶薄膜と,強電場の印加が期待できるイオン液体を用いて試料を作製した。

LCCOのようなスピン熱伝導物質はラマン分光においてtwo-magnonピークと呼ばれるマグノン由来の特徴的な幅広いピークを示す。このピークは電圧印加によって減少し,電気的なショートによって回復することがわかった。これはマグノンの通り道に障害物となるホールを電気的に導入・排除したため。

そこで,サーモリフレクタンス法と呼ばれるレーザー光を用いた熱伝導評価法により,LCCO薄膜の熱コンダクタンス(GLCCO; 熱の流れやすさを表す物理量)を測定した。GLCCOは電圧印加による減少とショートによる回復を示し,熱伝導が動的に電気的に制御されていることが確認された。

熱伝導やマグノンの変化率は予期していたものよりはるかに大きな値を示した。この理由は多結晶薄膜を用いたことによって薄膜内部へのイオン液体の浸透が起こり,制御面積が大幅に向上したことにあると考えられるという。

材料の熱伝導の制御を,スピン熱伝導物質に着目したものは今回が初めて。スピン熱伝導物質の中には室温やそれ以上でも高い熱伝導と異方性を示すものも多く報告されているが,今回は多結晶薄膜を用いたため,ランダムな方向を向いた微結晶の熱伝導が平均化されてしまい,それらのメリットは生かせなかった。

今後は,微結晶の向きをそろえることによってそれらの問題を解決すると同時に,マグノン制御の詳しい機構を調査するとしている。

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