東大ら,面直熱流を計測するフレキシブルセンサ開発

東京大学と日東電工は,高精度な面直熱流の計測が可能な薄膜型フレキシブル熱流センサを世界で初めて開発した(ニュースリリース)。

これまで温度センサを軸に行なわれてきた熱マネジメントを一新する技術として,熱流センサが注目を集めている。

熱流センサは主に測定対象の表面での熱の流出入,つまり,面直熱流を測定対象としており,通常の温度計では直接観測が難しい熱特性を定量化できるが,現在まで計測精度の悪化の要因となる,熱流の面内成分由来の信号の影響を受けない薄膜型熱流センサは実現しておらず,社会実装に向けて高精度に面直熱流を検出可能なセンサの開発が求められていた。

研究グループは,磁性金属細線の直列接続に使われている電極のゼーベック係数に着目した。磁性金属と同様のゼーベック係数を持つ電極を実装することで,温度ムラにより現れるゼーベック効果を排除し,面直方向の熱流を高感度に測定できる熱流センサの開発を試みた。

今回は量産プロセスに適した材料,具体的には,室温付近での成膜でも2μV/Kの巨大な異常ネルンスト効果を示す鉄とガリウムからなる強磁性体金属(Fe79Ga21)と,Fe79Ga21と等しいゼーベック係数を持つニッケルと銅からなる電極をセンサ材料に用いた。これらの磁性金属と電極をRoll-to-Rollスパッタ法を用い,フレキシブルなPET基板上に成膜したものを加工し,熱流センサを作製した。

面直・面内方向の熱流を発生させるヒーターを使った実環境に近い状態でセンサ特性を測定し,Cuを電極に用いたゼーベック効果が打ち消されていないセンサと比較した。

その結果,比較用のセンサでは温度ムラによるオフセット信号が面直熱流由来の出力信号に対して大きく面直熱流の直接測定が困難である一方で,この研究で開発したセンサでは,オフセット信号が出力信号に対して十分小さく抑えられており,出力信号を読み取ることで面直熱流を直接計測可能な磁気熱流センサが作製できたことを確認した。

開発したセンサは,ディスプレーに用いられる透明導電膜や反射防止膜の形成などの量産プロセスで用いられるRoll-to-Rollスパッタ法で磁性金属と電極をPET基板上に形成し,センサを作製しており,低コスト化・フレキシブル化・大面積化・量産化といった異常ネルンスト効果を用いたデバイス開発上の利点とされる特性がフルに発揮された実使用可能な熱流センサが実現できることを示した。

研究グループは,磁気熱流センサが実用化された暁には,高効率な熱マネジメントに向けた熱計測技術の構築に貢献することが期待されるとしている。

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