電通大,高性能燃料電池電極触媒を開発

電気通信大学は,Pt3Coバイメタルナノ粒子表面に選択的にSnO2ナノアイランドを形成させる手法を開発し(特許出願),新型SnO2ナノ粒子/Pt3Co/C 燃料電池電極触媒を設計・作製することに成功し,世界トップクラスの性能と高い耐久性を示すことを見出した(ニュースリリース)。

2014年12月にトヨタ自動車から燃料電池車MIRAIが市場投入され,来年にはさらに国内外の他自動車メーカーから燃料電池車の市場投入が予定されている。無尽蔵な水素と空気から電気を得ることができる燃料電池は,持続的社会を保証するエネルギー多様性の確保と水素社会の実現のために必須な科学技術となる。

しかし,燃料電池自動車の本格普及にとって燃料電池電極触媒の性能・耐久性の大幅向上が緊急の最大の問題の一つであり,問題解決のための触媒機能最大限化と,耐久性向上のメカニズムの解明,次世代触媒開発の設計指針の提示が強く求められている。

今回の燃料電池電極触媒の性能の実現は,格子が縮んだスケルトン白金表面の反応サイト(Site 1)と SnO2ナノ粒子界面の反応サイト(Site 2)の二つの活性サイトを作り出すことに成功したことによる。すなわち,研究では表面構造と電子状態を同時にチューニングする方法を見出した。

活性ナノ粒子の構造と電子状態は,大型放射光施設SPring-8に電通大/NEDOが新たに建設した世界オンリーワン・世界最高性能の燃料電池計測用のX線吸収微細構造(XAFS)ビームラインBL36XU,高分解能電子顕微鏡等により明らかにされた。

それによると,従来の燃料電池触媒Pt/C,Pt3Co/C等は電位の上昇過程(0.4 VRHE⇒1.0 VRHE)と下降過程(0.4 VRHE⇒1.0 VRHE)とで表面構造と電子状態の変化にヒステリシスを示すのが普通であるが,新型SnO2ナノ粒子/Pt3Co/C電極触媒はヒステリシスを示さない特徴を示すという。

また,新型SnO2ナノ粒子/Pt3Co/C電極触媒は,性能劣化の原因となる粒子成長や表面構造破壊などがほとんど見られない特徴も示す。これは,今後の燃料電池車本格普及のための燃料電池触媒設計の一つのガイドラインとなるものだとしている。

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