NEDOら,Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚を実用化

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,東北大学,Clio等のグループとともに,Muse細胞から皮膚のメラニン色素を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に調製する方法を開発し,ヒト3次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立した(ニュースリリース)。

Clioは今回確立した技術をDSファーマバイオメディカルにライセンスし,同社がヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定的な製造技術を開発することで,医薬品・化粧品等の開発におけるスクリーニングや製品性能検証等用途に用いるキットの販売開始に至った。

NEDOが進める再生医療技術開発の成果の一つである,2010年に東北大学のグループによって発見されたMuse細胞は,我々の皮膚,骨髄,脂肪等に広く存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞であり,生体内において傷害を受けた組織に自発的に移動し修復する働きを有していることから,安全で有効性の高い再生医療が実現されるものと期待されている。

今回,研究グループは,Muse細胞から皮膚のメラニン色素を産生するヒトのメラニン産生細胞を安定的に作り出す方法を開発した。また,そこで得られたメラニン産生細胞を用いてヒト3次元培養皮膚を作製する実用化可能な技術を確立した。

ヒトのメラニン産生細胞は皮膚において重要な役割を果たすものの,従来の技術ではこれを大量に培養することが難しく,メラニン産生細胞を含むヒトの3次元培養皮膚の安定的な製造は困難だった。

この実用化により,医薬品や化粧品等の開発において動物実験を用いず,ヒトの皮膚により近い培養皮膚を用いた製品機能の検証が可能になるとともに,医薬品や化粧品等による白斑症等の副作用や,化粧品の美白効果も検証可能になり,安全性や効能の高い製品の開発が促進されることが期待されるとしている。

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