理研ら,スパコン「京」を用いて積乱雲のリアルな表現に成功

理化学研究所計算科学研究機構,海洋研究開発機構,東京大学大気海洋研究所の共同研究チームは,スーパーコンピュータ「京」を使って水平格子間隔1 km未満の超高解像度の全球大気シミュレーションを行なうことに世界で初めて成功し,この結果から水平格子2 km未満の解像度にすることでこれまでは詳細に表現することが難しかった積乱雲を非常に良く表現できることを明らかにした。

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この研究により,一つ一つの積乱雲から全球規模の積乱雲群との相互の関係をより正確に調べることが可能となり,甚大な被害をもたらす積乱雲群である台風や,集中豪雨などの発生メカニズムの解明,雲の気候への影響の研究などに寄与することが期待できる。

研究では,スーパーコンピュータ「京」の能力を生かして,これまでの地球シミュレータでの最高解像度である水平格子間隔3.5kmを含む,複数の解像度でのシミュレーションを行なった。その結果,水平格子間隔2kmを境に,モデルの中で表現できる積乱雲がより現実のものに近づくことを明らかにした。

共同研究チームの研究者らは,2005年の地球シミュレータ上で行われた世界初の全球雲解像実験以降,さらなる精度向上を目指して台風や集中豪雨のもととなる積乱雲に着目し,本格的な熱帯雲擾乱の研究を世界に先駆けて行なってきた。スーパーコンピュータ「京」上での本シミュレーション結果は,全球において水平格子間隔1 km未満というかつてない領域に到達したという意味で,気象気候科学の未来を切り開くもの。

これまでは詳細に表現することが難しかった積乱雲が劇的に良く表現されたことによって,今後の当該研究分野の進展に大きく寄与することが期待できる。さらに今後,計算手法の改良や,シミュレーション時間の延長,事例の積み重ねによって,一つ一つの積乱雲と全球規模の組織的な積乱雲群との相互関係を精密に調べることが可能になる。また,積乱雲が現実に近いかたちでシミュレートできることで,甚大な被害をもたらす積乱雲群である台風や集中豪雨などの発生・発達過程の解明や,雲の気候への影響を詳細に調べる研究に大きな進歩が期待できる。

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