月刊OPTRONICS 特集序文公開

ネットワーク制御したカーボンナノチューブ膜による新規赤外線検出素子の研究

著者:日本電気 弓削亮太, 田中 朋, 殿内規之, 佐野雅彦

1.はじめに

赤外線センサは,赤外線を電気信号に変換して温度情報を取得する技術である。これにより,人や物体から放射される赤外線を検知することが可能になる。この特性から,赤外線センサは多岐にわたる分野で利用されていて,例えば,人体用サーモグラフィーや構造物の品質保証・食品安全検査機器,夜間運転支援のナイトビジョンシステム,航空機の航法支援システム,防犯カメラなどに利用される1)。赤外線センサの主な分類として,「量子型」と「熱型」の二種類がある。量子型の赤外線センサは,赤外線入射によるキャリア励起を電気信号として出力する方式である。この方式では,赤外線波長に応じたエネルギーに対応するバンドギャップを備えた半導体材料を受光部に用いている。量子型センサにおいて,正確な計測を行うためには,センサ自身が発する熱ノイズ信号を除去する必要があるため,通常は冷却機構が必要になる。そのため,量子型センサは「冷却型センサ」とも呼ばれる。一方,熱型センサは入射赤外線による受光部の温度変化を電気信号に変換する方式で,起電力を検知するサーモパイル型2),焦電効果を利用する焦電型3),抵抗変化によるボロメータ型1)などがある。多くの場合センサの冷却が不要なため,非冷却型センサとも呼ばれる。

非冷却型赤外線センサは,赤外線センサ市場におけるシェアの約90%を占めており,その検出部にはボロメータ型が主流である。このタイプのセンサの性能指標として特に重要なものに,温度変化に対する電気抵抗の変化率(Temperature Coefficient of Resistance, TCR)があり,一般的に用いられる酸化バナジウム(VOx)の室温付近におけるTCRは,約–2%/K程度である4)。この材料は,20年来大きく変化していないため,近年,感度向上を目的として新規材料の探索が活発に行われており,直径数ナノメートルの一次元構造を有するカーボンナノチューブ(CNT)を用いたネットワーク膜が,有望材料の一つとして注目されている5, 6)

NECは,1991年に飯島澄男特別主席研究員によりCNTを世界で初めて発見し5),これまでナノ炭素材料の製造,精製及びデバイス化等ナノテクノロジー領域を牽引する研究開発を進めてきた。近年,我々は,電界誘起層形成法(ELF法)7, 8)により抽出した半導体型単層カーボンナノチューブ(半導体型CNT)ネットワーク膜をボロメータ材料として利用することで,TCRが従来のVOxの約3倍になることを明らかにし9),従来の製品化されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子化技術10)を活用した赤外線イメージセンサのVOx部分を半導体型CNTネットワーク膜に置き換えたセンサの試作・動作実証に成功した11)。本稿では,半導体型CNTネットワーク膜の構造や電気特性の評価,及び,それを利用したMEMS素子化プロセスを活用したアレイセンサ素子の作製,評価について解説する。また,新たに取り組んでいる低コスト・フレキシブルが可能なセンサ素子についても紹介する。

【月刊OPTRONICS掲載記事】続きを読みたい方は下記のリンクより月刊誌をご購入ください。

本号の購入はこちら

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア