月刊OPTRONICS 特集序文公開

コヒーレントドップラー・ライダーの小型化を支える信号処理技術─レーダー信号処理から光計測への技術転用─

著者:メトロウェザー 古本淳一

1.はじめに

近年,気候変動に伴う極端気象の頻発化や,無人航空機(UAS)の社会実装の加速を背景に,高精度かつ高空間分解能なリアルタイム風況情報への需要が急速に高まっている。従来のカップ式・超音波式風速計は設置点の風を計測する「点」の観測に留まり,都市部のビル風や空港周辺のウィンドシアといった空間的に複雑な風の現象を捉えることは困難であった。

こうした課題に対し,赤外レーザー光を用いて遠方の風を三次元的に計測するコヒーレントドップラー・ライダー(以下,ドップラー・ライダー)は極めて有効な手段である。しかし,従来のドップラー・ライダーはコストと設置性の面から適用範囲が限定されていた。

当社は,京都大学における30年にわたる大型大気レーダーの開発・運用で蓄積した信号処理技術を光計測領域に転用することで,レーザー出力を従来の大型機材の1/10以下に抑えつつも高精度な風計測を可能にし,装置の大幅な小型化・低コスト化を実現した。本稿では,ドップラー・ライダーの動作原理を概説した上で,光ファイバー技術による光学系の小型化設計と,レーダー信号処理技術の光計測への転用を中心に,当社技術の詳細を紹介する。

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