1.はじめに
1.1 拡大するLEO コンステレーション
昨今,LEOコンステレーションの発展が目覚ましい。現在最も先行している「Starlink」はすでに数千機規模の衛星を運用し,個人向けブロードバンドから,企業・政府・防衛向けサービスまで展開しており,「StarlinkDirect」のようなモバイルダイレクト通信の提供も開始されている。GEO衛星に比べ低遅延(数十ミリ秒程度)と比較的高い通信速度を両立し,航空機や船舶向けの移動体通信にも利用が進んでいる。また「OneWeb」は数百基ながらも,欧州などの企業・政府向けを中心にグローバルカバレッジを拡大している。
1.2 LEO 周波数帯競争のはじまり
今後はさらに複数のメガコンステレーションが参入する。注目されるのが「Amazon LEO」であり,「AWS」との連携によるクラウド統合サービスが差別化要因になると見られる。また,中国では「国網(Guowang)」計画や「千帆(G60 Starlink)」など,国家主導の大規模通信コンステレーションが進められ,数千~ 1 万基規模の展開が構想されている。欧州では,マルチオービットで構成される「IRIS2」が進行しており,政府・防衛用途を含めた安全保障と商用通信の両立を目指している。
現状ではStarlinkの一強であるが,このような複数のLEOコンステレーションが構築されると,周波数資源の逼迫と干渉が大きな課題となる。特にKu帯やKa帯など,通信に適した周波数は,同一・隣接周波数におけるユーザ間の干渉リスクが高まる。また,モバイルダイレクトサービス(Direct to Device /Cell:D2D /D2Cとも呼ばれる)によって地上の5G/6Gネットワークとの周波数共用も進む中で,NTN(非地上系ネットワーク)としての統合的な干渉管理が不可欠となる。
しかし,人類は未だ,常に周回し続ける数十万基もの衛星の干渉調整を行ったことはない。アフリカ,中央アジア,南米などの地域では,各国家戦略として通信インフラを提供すべく,カバレッジの重なりが発生するであろうし,各国の思惑がある中で,欧州,米国,中国などのコンステレーション間で柔軟な干渉調整を行うことができるのかも未知である。また,地上局も,最適な地域は先行優位となり,後発ほど干渉を避けた不利な(天候の悪い)地域に設置せざるを得なくなる。
このようなLEOコンステレーションの周波数帯の課題解決に向けて,まず利用できる周波数帯を広げるためにVバンドやEバンドなどの適用も開始1)されている。また,ミリ波でも高周波側ほどに天候影響を受けやすいという問題は解決しないため,有利な周波数帯を利用すべく,競合より優位になる軌道高度や軌道面の分離,さらには柔軟な軌道制御能力が求められ,燃料搭載量の増加につながる。このアンテナについても,ビームの指向性を高めて不要な干渉を抑制するために,より大型で多素子のフェイズドアレイアンテナの搭載をするとなれば,電力消費と構造の大型化を招く。このような競争は,衛星そのものの製造コストと打上コストに直結し,何れかの点で事業的な限界が発生する可能性もある。
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