名大ら,超高層大気の寒冷化を33年間の大型レーダ観測から解明

情報・システム研究機構 国立極地研究所と名古屋大学の研究グループは,33年間にわたる欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダの観測データを独自の手法で解析することにより,超高層大気の寒冷化の様子を定量的に明らかにした(ニュースリリース)。

地球温暖化により超高層大気は寒冷化することがモデル計算で予想されていたが,これまでの観測データに基づく寒冷化の程度は,モデル計算の予測値と大きな違いが生じている。

その理由として,(1)超高層大気の温度の長期的な変動は30年間で数10度程度と見積もられるのに対し,太陽活動の影響による短期的な変動が数年で数100度にもなることや,(2)各データの持つエラーが長期変動の値に比べて大きいこと,(3)年々進化する観測手法に対して長期間の統一したデータベースを作成することが困難なこと,などが挙げられる。

今回の研究では,EISCATレーダデータの詳細な解析から,精度の高い温度の長期変動分布を導出した結果,極域の超高層大気は1年あたり約1.4度の温度低下が起きていることが分かった。この結果は,超高層大気の寒冷化が最新のモデル計算結果とも整合的に生じていることを示している。

地表面に比べて10倍以上も大きな変化をする超高層大気の温度の長期変動を充分に調査していくことが,超高層を飛翔する多くの人工衛星軌道の正確な予測や,地球温暖化の進行を予測する上で重要であることを,この研究は示している。

研究グループは,今回明らかになった超高層大気の温度変動の長期トレンドが,地表面と比べると10倍以上も大きな変動を示すことから,地球温暖化の進行を予測する上でも役立つと考えている。しかし,その因果関係を含む定量的な調査や理解は未だ不十分であり,更なる研究が必要だとしている。

また,今後,最新の非干渉散乱レーダが設置されれば,それによって得られるデータと,今回の研究用に作成したEISCATデータベースとを有機的に組み合わせた調査を行なうことができ,超高層を飛翔する多くの人工衛星の軌道予測の精度向上が期待できるとしている。

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