理研,グラフェンの「炭素-酸素結合」構造を解明

理化学研究所(理研)は,金属電極に接触した「酸化グラフェン」の化学構造を理論的に調べ,「エノラート」構造という高い反応性の化学種であることを発見した(ニュースリリース)。

炭素原子1層の厚さで網状の物質であるグラフェンは,優れた物理的・電子的性質を持つ。グラフェンを利用した高機能な電子デバイスを作成するには,グラフェンの電子的性質の制御が重要になる。ほとんど電気抵抗がないグラフェンに半導体の電子的性質である「バンドギャップ」を持たせ,電流の流れを制御する方法の開発が待たれている。

現在,グラフェンの化学修飾が最も有望な方法として研究され,特に,酸素と反応することでつくる酸化グラフェンは,汎用性の高さや他の官能基への拡張性が優れるため,注目されている。しかし,形成される「炭素-酸素結合」がどのような構造を持っているかはいまだに明らかではなく,これまでは,酸素原子がグラフェン表面の炭素原子2つと結合している「エポキシ」構造であるという説が有力と考えられていた。

研究チームは,密度汎関数理論という高精度の理論計算を行ない,銅などの金属電極にグラフェンが接触した場合について,酸化反応の反応性,生成物の構造安定性,および電子物性の詳細を調べた。その結果,接触しているグラフェンを酸化させると,酸素原子1つがグラフェン炭素原子1つと結合している「エノラート」構造が,「エポキシ」構造より安定に生成されることを明らかにした。

今回の成果により,体系的にグラフェン表面の化学修飾が行なえるようになる。今後,他の官能基への展開も可能になり,多様な物性制御が実現できると期待できる。