理研など、乳児難治てんかんの突然死抑制効果を発見

理化学研究所は、精神発達障害を伴う乳児難治てんかんのモデルマウスにおいて発症の主要な引き金となる抑制性神経細胞の一種を特定し、さらに興奮性神経細胞での原因遺伝子産物であるナトリウムチャネル「Nav1.1」タンパク質の半減がてんかんに伴う突然死を抑制する効果があることを発見した。これは、理研脳科学総合研究センターおよび国立遺伝学研究所、群馬大学、熊本大学、米国ハーバード大学などによる共同研究グループの成果。

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乳児重症ミオクロニーてんかんは、生後1年以内に熱誘起性のけいれん発作で発症し、自閉症や知的障害の合併に加えてしばしば突然死を引き起こす。約8割の患者から電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子の1つであるSCN1Aの変異が見いだされている。

共同研究グループはこれまでに、SCN1A遺伝子が作るタンパク質「Nav1.1」が、神経細胞の興奮を抑える抑制性神経細胞の一種であるパルブアルブミン(PV)陽性抑制性神経細胞で多く発現していることや、SCN1A遺伝子を変異させたマウスはてんかんを発症すること、自閉症に似た社会性行動の異常と記憶学習障害を示すことなどを報告している。

今回、共同研究グループは、マウスにおいて特定の神経細胞種のみでSCN1A遺伝子を欠損させてNav1.1の脳内分布を詳細に調べるとともに、てんかん発作、運動失調、突然死などの症状についてそれらのマウスで比較した。

その結果、全ての細胞でSCN1A遺伝子を欠損させた場合よりも抑制性神経細胞だけで欠損させた場合のほうがより早期で頻回な突然死を引き起こすこと、加えて興奮性神経細胞でSCN1A遺伝子を欠損させると致死性が大きく改善することが分かった。さらにPV陽性抑制性神経細胞では、わずかなNav1.1の欠損が自発性てんかんを引き起こすに十分であることを初めて発見した。

これらの成果は、乳児難治てんかんの発症機構の解明、有効で副作用の少ない治療法の開発につながるもの。

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