東大,光ファイバ中のエルビウムの観察に成功

東京大学生産技術研究所の教授の溝口照康准氏,同助教の増野敦信氏,同教授の井上博之氏,大学院工学系研究科教授の幾原雄一氏,豪州モナッシュ大学研究員のフィンドレー・スコット氏,住友電気工業グループ長の斎藤吉広氏,同主幹の山口浩司らは,球面収差補正走査透過型電子顕微鏡環状暗視野法(Cs corrected HAADF-STEM法)という新しいイメージング法を用いることにより,光増幅器用ファイバ中のエルビウムが,ひとつひとつばらばらに存在している様子を直接観察することに成功した。

光ファイバ網の光増幅器にはレアアースを添加したガラスファイバが用いられているが,ガラスの構造は非常に複雑なため,ファイバ内部の原子を直接観ることはこれまでできていなかった。

今回の研究では,光ファイバの材料である酸化シリコンと,エルビウムの原子番号が大きく異なることに着目し,Cs-corrected HAADF-STEM法を適用することにより,光ファイバ中のエルビウムのみを優先的に可視化することに成功した。さらに,今回の結果から,光ファイバ中でエルビウム同士はお互いに離れており,原子レベルで分散していることも明らかとなった。

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エルビウム周囲の環境は光増幅特性に大きく影響するため,エルビウムがどのような状態でファイバー中に存在しているかを直接明らかにしたことで,将来の長距離かつ大容量光通信を支える光ファイバの開発に大きく役立つと期待される。

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