東京科学大学は、最大8つのらせん構造を持つ「多重ヘリカルナノグラフェン」を高い立体選択性で合成する手法を開発した(ニュースリリース)。

ナノグラフェンは、ベンゼン環が平面状に連結した構造を持つ炭素材料で、次世代エレクトロニクス材料として注目されている。これに、芳香環がらせん状につながった「ヘリセン」の骨格を導入すると、有機溶剤への溶解性の向上に加え、らせん構造に由来するキラル光学特性の発現が期待できる。
一方、複数のヘリセン骨格を導入すると、右巻き・左巻きの組み合わせによって立体異性体の種類が増加し、目的の構造を持つ化合物の分離・精製が難しくなる。特に、5つ以上のらせん不斉を選択的に制御した合成は、これまで実現されていなかった。
研究グループは、らせん構造の巻き方向を制御できる「[2+2+2]付加環化反応」と、炭素同士の結合を形成する「ショール反応」を組み合わせた2段階の合成戦略を開発した。まず、[2+2+2]付加環化反応によってヘリセン骨格を選択的に構築し、続いてショール反応を行う。先に形成したらせん構造によって分子全体の立体配置が誘導されるため、後続の反応でも目的とする巻き方向を選択的に形成できる。
この手法により、2重、4重、6重、8重のヘリカルナノグラフェンの合成に成功した。8重ヘリカルナノグラフェンでは、最大136種類の立体異性体が生じ得るのに対し、目的とする2種類の鏡像異性体のみを確認し、右巻き構造を持つ化合物を優先的に得ることができた。
さらに、合成した化合物の光学特性を評価したところ、構造に応じて可視光領域で異なる発光色を示した。特に6重ヘリカルナノグラフェンでは、蛍光量子収率が50%に達した。また、近赤外領域で高い発光特性を示すことも確認された。
今回の成果は、多数のらせん構造を持つ複雑な炭素分子を精密に合成するための新たな手法となる。今後、次世代エレクトロニクス材料に加え、キラル光学特性と近赤外発光を活用した高解像度バイオイメージングなどへの応用が期待するとしている。





