2025年,スピントロニクス世界市場規模は5,990億円

矢野経済研究所は,スピントロニクスデバイスの世界市場を調査し,カテゴリー別の開発動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

スピントロニクスは,電子が持つ電荷(電気的性質)とスピン(磁気的性質)の両方の性質を利用する技術分野である。スピントロニクスの物質の電気的特性と磁気的特性の双方を制御することにより得られる新しい物理現象を利用した材料やデバイスにより,エレクトロニクスやマグネティクス,フォトニクスといった電子・情報通信産業のイノベーションの創成が期待されている。

従来の電子デバイスは電荷を利用して情報を伝達するのに対して,スピントロニクスデバイスでは電子が持つスピンの向きを利用して情報を処理・伝達する。スピントロニクスデバイスは高速かつ低消費電力なデバイスであることから,消費電力の増加に頭を悩ませている情報技術の将来に大きく貢献する見通しだという。

現在,パソコンやスマートフォンなどに使用されている読み書き可能なメモリとしては,DRAM(Dynamic Random Access Memory),SRAM(Static Random Access Memory),フラッシュメモリなどが用いられている。

今後,デジタル家電や様々なIoT機器がネットワークに接続される時代にあっては,電源を入れると同時にそうした機器のアプリケーションが起動することが要求され,それらのメモリの利点を併せ持つユニバーサルメモリの出現が期待されている。さらに,従来用いられてきたDRAMなどの各種メモリの製造プロセスにおける微細化に限界が見え,製造技術の側面からも次世代メモリの開発が加速しているという。

スピントロニクスを用いた磁気メモリである,磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)は,高速なデータアクセスや非揮発性,低消費電力などの利点を持ち,現在のメモリの課題を克服できる可能性を持った次世代メモリとして注目されている。

将来展望については,2025年のスピントロニクスデバイス世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)を5,990億円と予測した。2025年に市場が形成されるのはスピンメモリとスピン集積回路の2カテゴリーとなり,スピンメモリが68.6%を占め,次いでスピン集積回路が31.4%となる見込みだという。

​スピントロニクスデバイスは,磁気メモリや,磁気センサ,磁気トランジスタ,磁気トルクオシレーターなどの様々な分野での応用が期待されており,将来的には大規模な情報処理システムの実現に向けた重要な技術として注目を集めている。

また,IoTやスマートホームなどの分野においても,スピントロニクスデバイスを利用した高感度センサの開発が進められており,さらに,量子コンピュータの実現にも重要な役割を果たすことが期待されている。

そのようなことから,スピン熱制御や量子スピントロニクスの2カテゴリーにおいても市場が形成され,2045年のスピントロニクスデバイス世界市場規模は10兆6,540億円まで拡大すると予測した。

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