阪大ら,光ファイバー1本のレンズレス内視鏡を開発

大阪大学,埼玉医科大学,宇都宮大学は,直径0.1mmという髪の毛の太さほどの光ファイバー1本からなるレンズレス内視鏡を開発した(ニュースリリース)。

これまでの細径な内視鏡は,1mm角ほどの小型CMOSカメラを用いたものや,直径400nmの光ファイバーを5,000本束ねた直径数mmの内視鏡が臨床にも使用されてきた。しかし,これらはいずれも結像するためのレンズが必要。このレンズの大きさが内視鏡の極細径化を阻んでいた。

レンズレス・シングルファイバー・ゴーストイメージングは,単一の光ファイバーで光拡散場の中にある物体をイメージングするために,ゴーストイメージングと呼ばれるイメージング技術を用いる。

ゴーストイメージング法は,あらかじめ座標が登録された光(スペックルパターン)と,その光が物体を照らした散乱光の信号強度の相関関係から測定対象物体をイメージングする。

研究グループは,光学系を作製し,すりガラス状の拡散板を回転させることでレーザーのスペックルパターンを制御した。3万枚のスペックルパターンをCMOSカメラで事前に記録し,同じスペックルパターンを測定対象に照射した。測定対象の散乱光は,光ファイバーを介して記録する。

従来の光ファイバーバンドル内視鏡と比較すると,今回開発した内視鏡は極めて細く,従来の内視鏡と比較してもエッジが鮮明になっている。このように光ファイバー先端から10mmの位置にある測定対象を1本の光ファイバー(光ファイバーの全長2m)でイメージングすることに成功した。

また,光ファイバーと測定対象の間に光散乱場の一つとして拡散板を入れて実験を行なった。測定対象は一辺が1mm角の正方形とした。拡散板がない場合,脳外科内視鏡の分解能が低いため像はぼやける。

一方で,今回の方法を用いると,測定対象の拡散光との相関関係から画像化することができるので,測定対象をうまく復元することができた。このように血液による光散乱場においても堅牢なイメージングが可能になることを,シングルファイバーイメージングで初めて実証することができた。

使用する光源の波長や偏光,波面といった光の性質を精密に制御することで,測定対象の吸光度や異方性,形状なども取得できるという。研究グループは,極細径の光ファイバーからなるレンズレス内視鏡の実現により,患者の生体深部の病態の直接観察が可能になるとしている。

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