阪大,被写界深度の深いレンズレスカメラを開発

大阪大学の研究グループは,異なる距離にある被写体を一度の処理で鮮明に映し出すことができる新型レンズレスカメラを開発した(ニュースリリース)。

レンズレスカメラは,レンズを使わないため,より薄型で軽量なカメラを作ることができる革新的な技術。しかし,レンズがないため,通常のカメラのように対象物をはっきりと捉えることはできない。

そこで,取得したデータを画像再構成処理で解析することで,対象物の画像を再現する。この画像再構成処理には,カメラの結像特性を示す点像分布関数が必要。しかしこの関数は,対象物の距離によって変わる。

この問題から,これまでの技術では,一定の距離でしかピントの合った画像を得ることができず,他の距離の物体はぼやけてしまう,という課題があった。つまり,被写界深度が制限され,一度の再構成処理で広い空間範囲を鮮明に映し出すことは困難だった。

今回,研究グループは,新型のレンズレスカメラの開発を進め,光学系に放射状符号化マスクを導入することで,異なる距離にある被写体を一度の処理で鮮明に映し出すことに成功した。

これまでのレンズレスカメラは,一定の距離範囲にしかピントを合わせられないという課題が存在したが,この新しいアプローチにより,その課題を解決した。

このレンズレスカメラは,多様な距離に存在する被写体を一度の処理ではっきりと撮影することができる。また,放射状符号化マスクの構造の最適化により,画質も向上した。実機を用いた撮影実験からも,深い距離範囲で被写体を明瞭に捉えられることを確認した。

この研究の成果によって,被写界深度が深い薄型カメラの開発が可能となる。これにより,研究グループは,被写体が深い奥行き分布を持つ場合や,カメラに対し近距離に物体が存在するような撮影状況においても,薄型デバイスでの明瞭な画像化ができるとするほか,医療用カメラや工業検査用カメラなど,様々な分野での応用が期待されるとしている。

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