奈良先端科学技術大学院大学(NAIST),東京大学,名古屋大学の研究グループは,レーザーを用いて,マイクロメートルサイズの細胞や粒子を高速に判別し,1つ1つ高効率かつ高純度に分取する技術を開発した(ニュースリリース)。
現在,解析技術の進歩に伴い,目的の細胞や粒子をより高速に,間違いなく,効率的に選別する装置の開発が望まれている。しかし従来装置(セルソーター)では,多くの粒子を流したときに粒子同士の間隔が短い場合が多くなり,その中の個々の粒子を正確に取り分けることができないため,「分取速度を上げようとすると分取精度が落ちる」「分取精度を上げようとすると分取速度が落ちる」というトレードオフが生じていた。
今回の研究では,マイクロチップ中にマイクロメートルサイズの細胞や粒子を高速で流し,その流路中に顕微鏡によりフェムト秒レーザーを集光させることにより,このトレードオフの突破に挑んだ。光を1,000兆分の1秒(フェムト秒)の時間に集中させたこのレーザー光を顕微鏡により液体に集光すると,液中でマイクロメートルサイズの気泡が発生する。
研究グループは,流路中でこの気泡の大きさを細胞や微粒子と同程度に制御することができるため,フェムト秒レーザーを用いることにより,たとえ微粒子が数珠つなぎとなって流れてきても,その中から目的とする1つの微粒子だけにこの気泡を作用させ,分取できると考えた。
従来装置で用いられている電気的・機械的な分取方法では,粒子の間隔のムラに起因するポアソン分布にしたがって複数の粒子を同時に分取してしまい,分取精度が制限されることになる。今回の研究では粒子間隔が粒子の大きさまで小さい場合でも,非常に短時間に,目的とした粒子を分取できることを実験により示すことができたという。
研究グループは,今回レーザーとマイクロチップを駆使することにより,これらの従来の高速分取装置では突破できなかった限界を超える方法提案に成功し,「超」高速セルソーターを実現する要素技術を開発できたとしている。