科学技術振興機構(JST)は,産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題「リソグラフィ用レジストの高性能化モジュール」の開発結果を成功と認定した(ニュースリリース)。
この開発課題は,大阪大学の研究グループらの研究成果を基に,平成26年3月から平成30年3月にかけて東京エレクトロン九州に委託して同社にて企業化開発を進めていたもの。
最先端半導体デバイス製造のために次世代リソグラフィ技術として導入が進められているEUVリソグラフィは,露光光源強度不足のため生産性が低く,高コストになるという課題があり,これを補うためにレジスト材料の高感度化が検討されてきた。しかし,従来の化学増幅型レジストを用いる方式では,レジスト高感度化と解像度・パターン寸法ばらつき(ラフネス)特性の維持を同時に実現することは困難だった。
2013年に発表された「光増感化学増幅型レジスト」(PSCARTM)は,レジストを高感度化する手法として,産業界で実用化へ向けた研究開発が進んでいる。このレジストは,化学増幅型レジストのベース樹脂に加え,増感性の光酸発生剤(PAG),クエンチャ,光増感剤前駆体(PP)を混合したもの。
今回研究グループは,このレジストのプロセスにおけるUV一括露光を行なう「EUVリソグラフィ高感度化モジュール」を開発した。EUVリソグラフィ高感度化モジュールにより,PSCARTMの光増感反応による増感に必要なUV露光量を,実用的なプロセス処理時間内で付与することができるという。
具体的には,PSCARTMのプロセスでは,EUV露光後,PEB(Post Expose Bake:露光後のベーク処理)と現像をする前にUVで一括露光を行なう点が従来のレジストプロセスとは異なる。この反応では,原理的に像のにじみを抑えつつ増感できるため,レジスト高感度化と解像性やラフネス特性の維持を同時に実現できると期待されている。
また,EUVリソグラフィでパターニングしたパターン寸法の制御に必要な,高度な露光量制御も可能となった。さらに塗布現像装置内で,インラインによるPSCARTMのUV一括露光処理が可能になった。このことにより,EUV露光後からPEBまでの時間や環境を管理した条件でプロセス処理が行なえるためプロセスの安定性が増したという。
研究グループは今後,半導体デバイスの量産に向けて,関連企業やコンソーシアムと材料やプロセスのさらなる改善を推進することで,半導体デバイス量産プロセスの生産性の向上,低コスト化の実現が期待されるとしている。