NECら,スピンゼーベック熱電変換で10倍の効率

日本電気(NEC),NECトーキン,東北大学は共同で,新しい熱電変換技術であるスピンゼーベック効果を用いた熱電変換デバイスにおいて,従来比10倍以上の変換効率向上を実現した(ニュースリリース)。

熱電変換技術は,無駄に捨てられている膨大な廃熱を再び電力に変換して利用できる技術として,省エネや温室効果ガス排出削減に向けた活用が期待されている。スピンゼーベック熱電変換デバイスは,製作コストが安く,汎用性,耐久性が高いなどの利点があるが,変換効率が劣ることが課題だった。

スピンゼーベック熱電変換デバイスは,電力を取り出すための電極材料として,従来高価な白金が用いられていたが,今回,白金を代替する新しい合金材料であるコバルト合金を開発した。これにより大 幅なコストの低減に成功した。

さらに,このコバルト合金に磁性の性質を与えることで表れる「異常ネルンスト効果」と呼ばれる熱電効果を「スピンゼーベック効果」と併用して,白金を利用した素子の10倍以上に熱電変換効率を向上させた。

また,従来の700℃と比較して,約90℃と圧倒的に低い温度で,スピンゼーベック熱電変換デバイス用に緻密なフェライトの膜を作製できる成膜手法を採用した。このような熱処理温度の低下により,素子をプラスチックフィルム等の表面に作製することが可能になった。同様に,様々な形状に加工して活用できるフレキシブル素子が実現できるという。

今回開発した素子により,スピンゼーベック熱電変換デバイスの変換効率は,開発初期の素子と比較して約100万倍の改善を遂げ,発電素子としての実用化に向けて大きく前進しした。また,熱の流れを測るセンサーとして実用的な感度を達成する目処もついた。

今後,3者は,熱を大量に排出するプラントやデータセンターなどの建物,自動車などの廃熱から発電を行う技術の実用化に向けて,さらなる研究開発を進めていく。

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