富士通に見るIoT時代の光技術

販売促進支援技術
同社は赤外線LEDとカメラを組み合わせ,ヒトの黒目の位置を検出する視線検出センサを実用化しており,これを商品棚に取り付けることによって,客がどの商品に注目しているかをデータ化する技術に応用している。今回の展示では,ショーケースのガラスに透明液晶パネルを取り付け,客が見ている商品のすぐ脇にポップが浮かび上がるような販促技術を提案している。
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UV-NIR 用NDフィルター

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また,LED照明がライティングしている商品に,アプリケーションを入れたスマートフォンのカメラを向けることで,関連する情報をクラウドを介して提供する技術も開発している。具体的にはLEDの各色成分を時間方向で制御するというもので,RGBの強度をわずかに変化させることで光に情報を付与する。

現状ではこの強度変化がまだ大きく,よく目を凝らすと照明が当たった部分の光がちらちらと変化しているのがわかる。同社はここを中心に改良を進め,今年度中には製品レベルまでに仕上げたいとしている。
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自動車関連技術
同社のカーエレ事業は後発のため,EVの制御系などの次世代技術を中心に展示する。光学関連では,既に実用化されている複数のカメラで車の全周の画像を合成して俯瞰図を作りだす技術や,カメラでドライバーの顔や目の状態を検出して,居眠りや急病に対応する技術の展示があるが,どちらもソフトウェアに重きがあるものだ。

今回の展示には無いが,同社はレーザを用いた広角センシング技術を開発しており,これのADAS(Advanced Driving Assistant System)への応用について聞いてみたところ,レーザに限らずミリ波レーダ,カメラを総合した技術を開発しているという。ただ,中心となるのは上記したEVのパワートレイン制御や車内ネットワーク,セキュリティといった技術のようだ。
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3Dモデリング支援
同社は新たな取り組みとして,バーチャル・リアリティ(VR)を利用した仮想検証技術にも進出しようとしている。これは3Dディスプレイを使ったもので,原寸サイズを再現できる大型スクリーンとプロジェクタを用いたものから,米zSpace社と協力したデスクトップ型などを揃える。

UV-NIR 用NDフィルター
UV-NIR 用NDフィルター
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今回の内覧会で同社は,複数のクラウド同士がアメーバ的に連携する「ハイパーコネクテッド・クラウド」が出現する将来をパラダイムシフトと捉えて,ここに経営資源を投入する姿勢を鮮明にしている。

これは社会全体のムーブメントであり,通信以外の部分でも光技術がIoT社会にどうやって関わっていくのか,改めて考えてみる良い機会となるかもしれない。
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