富士通に見るIoT時代の光技術

IoTセンサ
IoTの世界では設置された無数のセンサがデータを送信し続ける。これらのセンサには様々な種類があるが,もちろん光技術を用いたセンサも重要な役割を果たす。照度センサやステレオカメラを用いた距離センサ,光路が遮断される回数をカウントするセンサ,さらには光ファイバを用いて構造物の変形や侵入検知,温度測定などを行なうファイバセンサも実用化されており,同社はこうした各種センサからのデータを様々に組み合わせる新たなビジネスを確立しようとしている。

UV-NIR 用NDフィルター
IoTを担う様々なセンサ
UV-NIR 用NDフィルター
風向・風量・日照・雨量センサ
UV-NIR 用NDフィルター
必要なセンサをまとめたBOX

 

例えば太陽光発電システムに日照センサを取り付けることができれば,その家はもちろんのこと,このシステムを設置した家が近隣に増えればその地域全体の日照状況を知ることができる。こうしたデータは,例えば熱中症の危険を知らせるデータとして野外作業を行なう現場などに提供することができる。

センシングとは少々異なるが,同社が電機メーカと開発中の,調理メニューをクラウドからダウンロードできる電子レンジのモニタリングをしたところ,いつ,どんなメニューが調理されているかだけではなく,どんな時期にどんな食材が調理されているかというデータも取得できることが分かり,将来的には食材のメーカや流通業界にも展開できるのではないかと睨んでいる。このように,IoTによるデータは想定外の成果を得る可能性を含有しており,ここに世界は注目している。

もちろん,このようなIoTによるビッグデータをビジネス化するためには無数のセンサが必要となる。同社では20数種類のセンサがあれば,その場所で起きている事象を全て推定することが可能になるという仮説を立てており,来るべきIoT時代に対する光センサの期待も大きい。

ヘッド・マウント・ディスプレイ(産業用)
注目の高いヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)だが,意外にも産業用途のものについては現在国内メーカは製品を出しておらず,今回同社が発売するHMDが産業用としては国産唯一のものとなる。新製品の「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE ヘッドマウントディスプレイ」は,片目の前に非透過型の液晶ディスプレイを据えるタイプ。0.4インチの液晶ディスプレイを拡大し,80cm先に15インチの画面が見えるようになっている。

UV-NIR 用NDフィルター
カメラは800万画素
UV-NIR 用NDフィルター
バッテリーは後頭部に装着
UV-NIR 用NDフィルター
Kopin製ディスプレイの視認性は良好

 

このディスプレイのメーカは米Kopin社で,映像を拡大するための光学系も担当している。Kopinはビデオカメラ等の電子ファインダ(EVF)で多くの実績を持つメーカで,HMDの開発も積極的に行なってきている。今回,富士通はHMDの処理機能を大幅に向上するために同社のスマートフォン向けLSI「Human Centric Engine」(HCE)を搭載。「ほとんどスマホが組み込まれていると言ってもいい」(説明員)という高機能化を成し遂げた。

具体的には,作業内容の記録やクラウドへのアクセスなどの機能を備えたほか,作業員の位置や動きなども細かく検出できるとしており,例えば若手と熟練工の動きの違いをデータ化するといったことも可能。こうした高い機能を備えながらもHCEの低消費電力によって,フル機能で動作させてもバッテリーは4時間程度使えるという。

さらに,これまでのHMDはバッテリーなどの電源を外部装置として別途持ち歩く必要があったが,新製品のバッテリーは本体後頭部に取り付けてあり,バッテリーを含めた総重量は315gに抑えられている。これはヘルメットと大体同じくらいの重さ。記者も体験してみたが,重さは殆ど気にならず,ディスプレイも明るさ,解像度共に良好であった。

同社では,このHMDから得られる情報をクラウド上に収集・共有して現場で活用することで,保守・保全現場の省人化を支援するビジネスを構築したい考えだ。また,民生・医療用HMDとして,同社が三井ベンチャーズと投資する東大発ベンチャー,QDレーザーの網膜走査型HMDも展示している。
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