1.はじめに
自動運転レベル4の社会実装が進みつつあり,自動運転社会の到来が目前に迫っている。多数のカメラやレーダーなどの周囲環境把握センサーから集約された情報を基に,車内に搭載された高速信号処理ECU(Electronic Control Unit)により,アクセルやハンドル操作を行うことで,自律的な自動運転が実現される。レーンキープや衝突防止自動ブレーキなど,すでに先進運転支援システム(Advanced Driver Assistant System;ADAS)として実装されている機能においても,多数のセンサーによる周囲把握が必要不可欠であり,高度化に伴い搭載されるセンサーの種類および数が爆発的に増えている。そのため,センサーと処理ECUをつなぐ通信線の本数が増えるだけでなく,カメラ等の高解像化に伴う所要データレートの増加による通信システムの高度化も急務となっている。現状ではECUとカメラ等のセンサーは同軸ケーブル等で直結されているが,ケーブル長が長くなると伝送損失の劣化に加え周波数応答帯域の狭窄化により結果としてデータレートが下がる傾向がある。そこで,直近のゾーンECUへセンサー等を接続することで通信線の短距離化を図る車載ネットワークのゾーン化が進みつつあり,結果としてハーネス削減から車両重量の軽減につながるものの,スイッチ機能を有するゾーンECU間は非常に大きな通信容量が必要となる。そこで,毎秒50ギガビットを実現しうる車載光ファイバー通信技術の研究と国際規格化が進んでいる。しかしながら,通常乗車している際にはあまり意識されないが,自動車内環境は一般の通信機器環境に比べると非常に過酷である。データセンターや地上通信局舎は温調管理がなされているが,車載環境では厳冬地域から灼熱の砂漠環境でもターンキーで動作する必要がある。自動車キャビン内での動作温度環境は–40℃から105℃として規定されている。加えて,車両振動がECUやハーネスに与える影響も大きく,通常の地上系通信向けデバイスをそのまま利用することはできない。
車載光ファイバー通信規格IEEE 802.3czでは低消費電力化のためレーザーとして面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)が前提とされている。短距離系データセンター内通信でも波長850 nmのVCSELレーザーを利用する通信規格がある。しかしながら,車載環境では温湿度環境が厳しいだけでなく,自動車の平均寿命10年以上を担保するため,レーザー活性層にアルミニウムを含ませないことでVCSELそのものの長寿命化が図られた。そのため,発振波長が980 nmと長波長化され,850 nm帯で最適化されているISO/IEC 11801準拠マルチモード光ファイバーでは実効モード帯域が狭くなる。そのため,信号処理を含めた通信システムだけでなく評価手法も新たに開発する必要がある。
【月刊OPTRONICS掲載記事】続きを読みたい方は下記のリンクより月刊誌をご購入ください。
本号の購入はこちら




