1. モビリティDX と車載ネットワークの重要性
自動車産業は現在,100年に一度と言われる変革期の只中にある。その中心にあるのが,ソフトウェアによって車両の機能や価値が定義される「SDV(Software Defined Vehicle)」への移行と,人工知能(AI)が認知から判断,操作までを一気通貫で行う「E2E(End-to-End)AI自動運転」の実用化である。これまで車載ネットワークは,CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった比較的低速な制御信号の伝送路として,高い信頼性を担ってきた。しかし,自動運転技術の高度化に伴い,車両内外を行き交うデータ量は爆発的に増大しており,ネットワークの役割は従来の「信号線」から,車両の知能を支える「情報の大動脈」へと劇的に変化しようとしている。
従来の機能別分散制御型アーキテクチャでは,増え続けるECU(電子制御ユニット)とワイヤーハーネスの複雑化への対応が難しくなりつつある。こうした課題に対し,世界的にはEthernetを中核とした集中型アーキテクチャや,車両を物理的な領域で分割制御するゾーン構成,そしてそれらを統括する高性能演算コンピュータ(HPC)の導入検討が進んでいる。このような背景から,自動車産業においては,従来の強みである高い信頼性と品質を維持しながら,いかにしてこの新しいアーキテクチャへ適応していくかが,重要なテーマとなっている。
筆者は長年,通信インフラ向けの光通信デバイスやネットワーク技術の開発に携わってきた。現在,車載ネットワークが直面している「大容量化」と「仮想化」という課題は,かつて通信インフラが乗り越えてきた技術変革と軌を一にするものである。本稿では,通信インフラ業界の視点から,SDVとE2E-AI自動運転がこれからの車載ネットワークに求める技術的要件を俯瞰し,「光化」と「SDN(Software Defined Networking)」の導入メリットについて解説する。また,通信業界が経験したパラダイムシフトの教訓を踏まえ,今後の車載ネットワーク開発における構造的な課題についても考察を加えたい。
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