1.はじめに
量子力学の原理を応用した技術は,現在,通信・計算・センシングなど多岐にわたる分野で活発に研究が進められている。通信分野においては,従来の手法を凌駕する安全性を実現する量子暗号通信が注目を集めている。
量子暗号の中核技術である量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)は,通信当事者間で暗号鍵を安全に共有する手法であり,すでに製品化されて市場に投入されている。QKDによって共有された鍵を用いて,使い捨て暗号(ワンタイムパッド)を適用すれば,情報理論的に完全な安全性が保証される。しかしながら,ワンタイムパッドには送信するデータ量と同量の鍵が必要となるという制約(例えば,100Gビットのデータを送信するには,100Gビットの鍵が必要)があり,鍵の使用効率が極めて低い。
この制約を回避するため,QKDシステムでは,共有された短い鍵(例えば256ビット)を用いて,AESなどの数理アルゴリズムに基づく暗号(以下,数理暗号)によって通信データを保護する方式が採用されている。この構成では,鍵の安全性は量子技術に依存する一方で,通信データの安全性は数理暗号に依存しており,将来的な解読リスクを完全に排除することはできない。
本稿では,通信データを量子技術で保護するY-00光通信量子暗号(以下,Y-00量子暗号)に焦点を当て,その基本原理と研究開発の現状について述べる。
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