月刊OPTRONICS 特集序文公開

量子ネットワーク実現に向けた研究開発

著者:大阪大学(1),浜松ホトニクス㈱(2),(国研)情報通信研究機構(3) / 山本 俊(1), 小林俊輝(1), 中島秀太(1), 生田力三(1),小玉剛史(2) ,(3) ,下井英樹(2), 三木茂人

1.はじめに

量子ネットワークや量子インターネットは幅広い研究領域で用いられるが,ここでは,複数の量子演算処理を担うユニット(Quantum Processing Unit;QPU)を量子的に接続することで形成する量子ネットワークを対象とする。多くのQPUを接続した量子ネットワークは,大規模なネットワーク型量子コンピュータまたは分散型量子コンピュータとして動作する。また,QPUを長距離量子通信で接続することで,QPUを利用した量子中継が実現し,量子ビットの状態を任意のノードに送信できる量子インターネットが実現する。ここで,接続とは離れたQPU間に「量子もつれ」が共有されることを意味しており,この量子もつれを利用した量子テレポーテーションによって,量子ビットの状態を任意のノードに転送でき,ゲート操作を転送できる。QPUには一般的にエラーがあるが,誤り耐性のあるQPUが実現し,任意の量子操作ができるようになれば,万能な量子コンピュータとしてネットワーク型量子コンピュータが動作する。量子中継に用いる場合は,誤り耐性までは必要がなく,より容易に実現する可能性がある。

この接続可能なQPUを実現するためには,図1のようにQPUと量子もつれにある物理系を送信し,別のQPUにその物理系の状態を移すことができる必要がある。何も送らずにQPU間に量子もつれを共有することは,量子力学の法則に反するため,不可能である。QPUを構成する物理系によって,様々な量子もつれの送信方法があり得るが,ここでは,真空中にトラップされた中性原子アレイを使ったQPUと,その中性原子から発光する光子との量子もつれを生成し,光子を介して別のQPUと量子もつれを共有する場合を考える。まず,この中性原子からなる量子コンピュータを以下で紹介する。

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