東大ら,マルチフェロイック物質におけるスピン・ネマティック相互作用の観測に成功

東京大学物性研究所准教授の益田隆嗣氏らの研究グループは,静岡大学,スイスのPaul Scherrer研究所,大強度陽子加速器施設 物質・生命科学実験施設(J-PARC/MLF),新潟大学と共同で,中性子磁気散乱と磁化測定を行なうことにより,スピン・ネマティック相互作用の存在を,初めて観測することに成功した。

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スピンと電気分極が同時に秩序化するマルチフェロイック物質は,電場によってスピンが直接制御可能な新しいデバイス材料として注目を集めている。これまで多くの物質では,複雑な磁気構造におけるスピン相関と電気分極との関係に注目が集まってきたが,分極間相互作用と磁気相互作用の関係は明らかにされてこなかった。

その中でBa2CoGe2O7は,電気分極がスピン演算子の対称2次テンソル(いわゆるスピン・ネマティック演算子)というシンプルな形で表される珍しい物質として,また,分極間相互作用と磁気相互作用の関係を解明できる物質として着目されていた。

さらに研究グループは,中性子磁気スペクトルの解析により,電気分極の誘電エネルギーを決定するという新しい試みを行なった。誘電エネルギーの大きさも示すスピン・ネマティック相互作用定数は,電場によるスピンの制御のしやすさを表しているため,マルチフェロイックデバイスの性能示数であることが提案された。

詳しくは東京大学プレスリリースへ。