東大など,印刷で作れる有機薄膜トランジスタ回路で個体識別信号伝送に成功

東京大学,大阪府立産業技術総合研究所,トッパン・フォームズ,JNC,デンソー,富士フイルム,日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース,TANAKAホールディングスの共同研究グループは,印刷で製造可能な高性能有機薄膜トランジスタ回路を開発,13.56MHzの商用周波数での個体識別信号の伝送に成功した。

今回の成果は①高移動度かつ熱安定性に優れる有機半導体「アルキルDNBDT」,②「塗布結晶化法」による新しい塗布・印刷法,③有機半導体デバイス集積化プロセスの開発によって実現した。

図1
新規に開発した13.56MHzに応答する有機TFT整流回路

①はJNCと東京大学,リガクの研究グループが開発したもので,典型的な塗布型有機トランジスタの性能(0.1-1cm2/Vs)を1桁も上回る10cm2/Vsのキャリア移動度を有する有機半導体「アルキルDNBDT」を開発した。②は東京大学の研究グループが開発。これは有機半導体を溶液で塗布すると同時に結晶化させて膜にすることができる簡便な手法で,今回新たに開発した方法では,連続的に溶液供給することによって,10cm角程度の「有機単結晶ウェハ」を製作することを可能にした。③は大阪府立産業技術総合研究所と東京大学の研究グループによるもので,有機半導体にダメージを与えないリソグラフィを用いたパターニング法により,高性能の有機TFTを作製する手法を開発した。この方法により,大阪府立産業技術総合研究所は,2個のトランジスタを組み合わせたRFID通信用整流素子を開発した。

図2
塗布結晶化法と有機単結晶ウェハ

伝送実験は,トッパン・フォームズが開発した低コストのアンテナデバイスと,上記のRFID通信用整流素子を直結して行ない,また異なる周波数の発振回路を用いることにより,個体識別機能を実証した。

図3
開発中の有機半導体論理回路

今後は論理回路部を搭載したRFIDタグの試作を進め,実用化への研究開発を加速させるとしている。また,東京大学内に組織した,有機材料開発からパネル部材,装置開発,デバイス開発を行なう企業とのコンソーシアム「ハイエンド有機半導体研究開発・研修センター」において,RFIDタグに限らず,高速動作の有機エレクトロニクスデバイスの開発を広範に目指す。

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