オハラは、同社が製造する光学ガラスが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星衛星探査機「MMX(Martian Moons eXploration)」に搭載された広角分光カメラ「OROCHI」とラマン分光器「RAX」に採用されたと発表した(ニュースリリース)。精密な光学観測を支える研磨レンズ用光学ガラスと、宇宙空間の放射線環境に対応する耐放射線光学ガラスの2種類が使用されている。
MMXは、火星の衛星フォボスから試料を採取し、地球へ持ち帰るサンプルリターンを目指す探査計画である。2026年10月20日にH3ロケット10号機で打ち上げられ、火星遷移軌道に投入された。今後、約1年かけて火星圏に到達し、約3年間にわたる観測や試料採取を経て、2031年度に地球へ帰還する計画となっている。

広角分光カメラ「OROCHI」は、火星衛星の表面地形や物質分布を観測するための装置である。衛星表面から反射される可視光を複数の波長で撮像し、表層の物質情報を取得するほか、試料採取地点周辺の含水鉱物や有機物などの観測を担う。このカメラのレンズにオハラの研磨レンズ用光学ガラスが採用されており、精密な画像取得に貢献する。
一方、ラマン分光器「RAX」は、フランス国立宇宙研究センター(CNES)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発した小型探査車「IDEFIX」に搭載されている。IDEFIXは探査機本体に先行してフォボス表面に着地し、表面を覆う堆積層(レゴリス)の物性や地盤情報などを取得する。RAXは、ラマン分光法を用いてフォボス表面の鉱物組成を分析する装置である。
RAXには、オハラの耐放射線光学ガラスが使用されている。一般に光学ガラスは、宇宙空間の高エネルギー放射線にさらされることで着色し、光の透過率が低下する場合がある。同社の耐放射線光学ガラスは、こうした放射線による着色を抑え、透明性を維持できることが特徴である。長期間にわたる宇宙探査において、光学系の透過率変化を抑制し、安定した観測性能の確保に寄与する。

オハラの光学・特殊ガラスは、これまでも宇宙・天文分野で採用されてきた。小惑星探査機「はやぶさ2」やNASAの火星探査車「パーサヴィアランス」、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」などにも使用されている。また、2026年にはNASAの「ナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡」の観測装置への採用も発表しており、宇宙探査や天文観測を支える光学材料として実績を重ねている。





