宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2026年10月20日、H3ロケット10号機により、火星衛星探査機「MMX(Martian Moons eXploration)」を種子島宇宙センターから打ち上げた。ロケットは計画どおり飛行し、打ち上げから約1時間11分後にMMXを正常に分離、軌道投入に成功した(ニュースリリース)。MMXは火星の衛星フォボスを主な探査対象とし、表面物質を採取して地球へ持ち帰ることを目指すミッションである。

MMXには、フォボスの地形や表面物質を調べるため、複数の光学観測機器が搭載されている。高解像度望遠カメラ「TENGOO」は、フォボス表面の詳細な地形を約40cmの解像度で撮影し、地形情報の取得や着陸地点の安全性確認に利用する。広角多波長カメラ「OROCHI」は、可視光の複数の波長帯で表面を撮像し、含水鉱物や有機物などの分布を調べる。これらの観測データは、着陸地点の選定や採取試料の分析に必要な情報となる。
また、レーザー高度計「LIDAR」は、フォボス表面にレーザー光を照射し、反射光が戻るまでの時間と反射光のエネルギーを計測することで、探査機から表面までの距離や反射率の分布を求める。カメラによる撮像とレーザー測距を組み合わせ、フォボスの形状や地形を多角的に把握する。
さらに、近赤外分光計「MIRS」は、0.9~3.6µmの波長帯を利用し、フォボス表面の鉱物組成や含水鉱物、有機物などの分布を調べる。撮像による地形・分布情報に加え、分光データから物質の特徴を解析することで、フォボスの起源や形成過程の解明につなげる。
MMXにはこのほか、NHKとJAXAが共同開発したスーパーハイビジョンカメラ「SHV」も搭載されている。4K・8Kの超高精細映像によって火星や火星衛星を撮影し、探査状況の可視化や宇宙探査の運用性向上に向けた技術実証を行う。
MMXは2027年に火星圏へ到達し、フォボスの詳細観測や着陸による試料採取などを経て、2031年の地球帰還を目指す。光学撮像、分光、レーザー測距などの異なる光技術を組み合わせ、火星衛星の地形と物質の両面から探査を進める計画である。





