理研、窒素欠乏時のラン藻の代謝を網羅的に解析し、代謝の矛盾を解消

理化学研究所は、窒素欠乏時のラン藻の代謝変化の全体像を明らかにし、窒素源枯渇時には炭素源を複数の炭素化合物に分散させて貯蔵するという、ラン藻独自の戦略を明らかにした。

微細藻類の一種であるラン藻は、窒素が欠乏した状況になると、エネルギーと炭素の貯蔵源として多糖(グリコーゲン)の合成という生体内の化学反応「代謝」を起こす。しかし、同じ窒素欠乏時で、グリコーゲン分解に働く遺伝子が活性化(転写)されることが分かっており、一方で代謝によるグリコーゲンの合成、他方で遺伝子の転写による分解という正反対の働きをする矛盾が生じていた。

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この矛盾を解消するため、研究グループは、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)を用いて、窒素欠乏下でのモデルラン藻「シネコシスティス」の代謝産物の一斉解析(メタボローム解析)を行なった。その結果、グリコーゲンだけでなく、コハク酸やリンゴ酸などの炭素化合物量が大きく増加することが分かった。このことから、ラン藻は「窒素欠乏時に、複数の炭素化合物に分散させて炭素とエネルギーを蓄積する」ことが明らかになった。また、核酸を構成するプリンヌクレオチドらは減少しており、特に高エネルギーなヌクレオチドから減少していることが分かった。さらに19種類のアミノ酸の量的変化も観察された。

今回の成果は、ラン藻の「代謝」と「遺伝子(転写)」との間にある矛盾を解消し、炭素代謝変化を明らかにしたもの。今後、バイオプラスチックの原料などの有用化合物を合成するラン藻の、外部環境による、炭素源の流れと蓄積の変化と制御機構を理解することで、さまざまな有用化合物の生産制御に貢献すると期待できる。

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