京大と豊田工大,量子ナノ構造を利用した太陽電池の光キャリアの振る舞いを解明

京都大学化学研究所・教授の金光義彦氏と研究員のディビット・テックス,豊田工業大学・教授の神谷格氏は共同研究で,三種類の波長のレーザ光を用いた分光測定によって,通常の太陽電池では利用できない近赤外領域の光を効率よく電力に変換できるナノ構造中間バンド型太陽電池の実現に向けた突破口を見出した。

理論的な単接合シリコン系太陽電池の変換効率は約30%なのが知られているが,この理論値を超える研究開発が進められており,これまで様々な構造の太陽電池が提案されている。しかし,それらの太陽電池が実際に期待される変換効率に達していないのが現状だ。

この変換効率を制限している主な要因の一つは,太陽光の光エネルギーの多くを担っている近赤外光を利用できないことだという。今回の研究では,近赤外光を利用するために提案されている中間バンド型太陽電池を,理想的な太陽電池材料の一つであるGaAs,あるいはAlGaAsのバルク結晶内にInAsの量子ドットや量子ディスクといったナノ構造を挿入することで作製し,その光学的・電気的な特性を明らかにした。

このナノ構造試料に対して異なる三種類の波長の光を同時に照射し,高効率なアップコンバージョンによる光電流を測定したところ,量子ディスクが光電流の増大に大きく寄与することが判明した。また,量子ドット構造を利用した中間バンド型太陽電池の効率が理論予想よりも低い原因も突き止めた。これにより,中間バンド型太陽電池の高効率化につながる可能性を示した。

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(a)試料構造、(b)多波長レーザー励起分光システムの概略図

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