光分析装置の開発トレンドを追う!

ラマン分光測定装置開発の進展

ラマン分光測定装置はポータブル化が一つのトレンドになっているとともに,高速イメージングや高分解能化が進展している。

写真4 浜松ホトニクスが開発したポータブルラマン分光装置。写真左のケースに入っているのが,SERS基板
写真4 浜松ホトニクスが開発したポータブルラマン分光装置。写真左のケースに入っているのが,SERS基板

浜松ホトニクスは,ポータブルラマン分光装置「C12710」を開発した(写真4)。ミニ分光器とレーザ励起集光光学系を集結し,安価に仕上げたもので,試料の分子結合状態を高精度に測定することが可能という。

この装置の最大の特長は表面増強ラマン錯乱(Surface Enhanced Raman Scattering:SERS)基板を使用することだ。これにより,通常のラマンスペクトル測定に比べてより確度の高い測定を可能にする。このSERS基板はナノインプリント技術で作製したものだが,ナノインプリントで量産することでコストメリットを享受することができるとしている。

今回開発したポータブルラマン分光装置の主な仕様だが,レーザ励起波長は785nm,出力は80mW,レーザ線幅は0.2nm。検出器は裏面入射型CCDを採用しており,スペクトルレンジは400〜1,850cm-1,分解能は5cm-1となっている。同社ではまた,ポータブルLIBS装置の製品化も進めている。光源に内製のマイクロチップレーザを使用したもので,物質の構成や元素が測定可能としている。

写真5 東京インスツルメンツが産学共同で開発した「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」
写真5 東京インスツルメンツが産学共同で開発した「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」

一方,レーザラマン顕微鏡で新たな成果が発表された。東京インスツルメンツと早稲田大学,学習院大学の研究グループが開発した「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」だ(写真5)。

一般的なラマン顕微鏡は,一点に集光したレーザ光を試料に走査して測定して画像を描き出すが,測定に要する時間が長いという課題があった。最近では高速イメージングを可能にする装置も登場しているが,今回研究グループが開発したのは,画像を一瞬で観測可能にしたものだ。

具体的には,レーザ光を21×21点の計441点の格子点状に分割して試料に照射し,各点からのラマン散乱光を同時に測定する。キーは試料やレーザを走査する必要がないという点だ。装置は東京インスツルメンツが研究機関向けにこの9月から受注を開始している。現状は倒立型だが,今後は正立型も製品化することで,様々な用途に対応したい考え。

今後の展望

光分析装置は分析技術やデバイス,システムを見ても着実に進展しており,活発な研究・開発が取り組まれている。例えば,スペクトラ・クエスト・ラボが分光計測用に開発中の1μm帯高出力・広帯域波長可変レーザがある。従来の外部共振器型半導体レーザに比べ,広帯域にわたって低反射を可能にするもので,高出力で高スペクトル純度,広帯域なモード・ホップ・フリー同調を実現するという。一方で,アプリケーション開発も重要視されており,対象となるユーザなどとの密接な連携の下での製品化を進めることが重要との指摘もある。今後の光分析装置の開発,市場動向には目が離せない。

※ここで取り上げた製品・技術は弊社動画サイト「OPTO.TV」でもご覧いただけます。