─「All-Photonics Network」はどう進めていきますか?
(芝)目標となるのは光のレイヤーと電子のレイヤーを融合したプロセッサですが,光のレイヤーは技術的にハードルが高く,2030年くらいにならないと実現しないと思われます。長距離通信に使っていた光トランシーバーの伝送距離をどんどん縮め,最後は情報処理のプロセッサの中にまで入れて,究極の低消費電力化をネットワーク全体で図ろうというのが今のアプローチです。なので2030年まで待っているのではなく,その手前の段階でもネットワークにもどんどんこうした技術を入れながら,低消費電力化に取り組んでいこうと考えています。
具体的にはネットワークの一部から光化していき,最終的なネットワークの形に移行していきますが,もちろん全部光にするわけではりません。5Gや6Gといった電波や電子の部分も残し,インターネットも含めてさまざまな価値を提供できるようなネットワークを提供していこうと考えています。まずは今のネットワークを400Gb/sに高速化し,オペレーションにAIを入れた自動化などが,直近として見えているところです。
─IOWNの実現でどんな世界が待っていますか?
(芝)IOWNで提供できる価値は4つ,まず,エネルギーやCO2の問題といった環境にやさしい持続的成長の実現。そしてコネクティッドカーのような究極の安全・安心。また人間の中でもいろんな価値観がありますが,そういった多様性に寛容な個人や社会全体の最適化。世界のモノや価値観をナチュラルに人に享受することもIOWNの価値と考えています。今のインターネットで不十分なところは,こういった新しいインフラでカバーしていかないといけません。
もっと具体的に言えば近い将来,IOWNによって時間や場所に制約されず働けるスマートワークスタイルの実現が期待されます。労働力不足を解消し,生産力を高める次世代農業,無人のトラクターが働く農場が当たり前になり,患者ごとに最適化されたパーソナル医療が普及します。運転ミスや車の故障を安全に制御し,事故が起こらないスマートモビリティも実現するでしょう。スマートシティにおけるスマートスポーツといったものもできあがってきます。
「Digital Twin Computing」でサービス,アプリケーションの新しい世界,仮想空間上に将来予測も含めたもうひとつの世界を作れば,例えばスマートヘルスケアではこうした生活習慣を続けていくと,どのくらいまで健康でいられるのかがわかってきます。その時,今の時点でどのように行動を変えていったらいいのか,そういったところもIOWNのプラットフォームを使うと可視化できます。
IOWN構想自体は非常に幅広い研究テーマを取り扱っています。単純に光の技術をネットワークに入れるだけでなく,AIを将来予測に使ったり,価値観をどう取り入れていくかといった,社会性,社会問題,倫理,哲学といった色々なものを包含した構想になっています。大きな構想ですので,グローバルに色々な方と一緒に進めたいと考えていて,弊社とインテル様,ソニー様と共同で国際的なフォーラム「IOWNグローバルフォーラム」を2019年10月31日に設立し,2020年3月2日よりメンバーの募集を開始してます。今の時点で国内175社,国外100社以上にご興味を持っていただいて,2030年のサービスリリースを目指して協力を進めています。