NTTが描く次世代光通信と新たな世界─IOWN構想が導く未来とは

◆芝 宏礼(シバ ヒロユキ:写真左)
日本電信電話(株) 研究企画部門 R&Dビジョン担当 担当部長 博士(国際情報通信学)
◆大西 隆之(オオニシ タカユキ:写真中央)
日本電信電話(株)研究企画部門 R&Dビジョン担当 担当部長 博士(工学)
◆工藤 伊知郎(クドウ イチロウ:写真右)
日本電信電話(株) 研究企画部門 R&Dビジョン担当 担当部長

インターネットの誕生以来,通信トラフィックは右肩上がりに増加を続けている。そして今なお,クラウドやストリーミング,さらにはIoTや5Gなど新たなサービスが登場し,需要を喚起し続けている。

それを支え続けてきた通信キャリアだが,既存の通信網では,旺盛な需要を受け止めきれない可能性や,膨大な消費電力の問題が顕在化してきた。

そこでNTTは昨年,新たなコミュニケーション基盤である「IOWN」構想を打ち出した。光技術を軸としたその青写真には,これまで日本が出遅れてきたプラットフォーマーへの野望も透ける。壮大な試みは果たして世界を変えるのか。このインタビューで開発の端緒を開いた「IOWN」について解説して頂いた。

─「IOWN」とは何か教えてください

(芝)IOWNとは「Innovative Optical & Wireless Network」の略で,スマートな世界を実現するための最先端の光関連技術と情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤です。2つの変革「Digital to Natural」と「Electronics to Photonics」により,環境に優しく,持続的な成長を実現し,究極の安心・安全・信頼を提供します。多様性に寛容で,かつ個だけではなく,全体最適化も図れるような世界や社会を提供し,これによってスマートシティやスマートワールドを実現していくものです。

まず一つ目の変革「Digital to Natural」ですが,例えば花の写真を見たとき,人は「きれい」という価値観で見ますが,一方,ミツバチにとっての価値観は「どこに蜜や花粉があるか」ということなので,花を紫外線で捉えて見ています。
 また,人の受容体はRGBの3色で中間色は脳で生成していますが,生物界最速のパンチを持つシャコは12色の受容体で物体を判別し,生物界最速で物事を見ることができると言われています。つまりそれぞれの生物は,生活環境や価値観に合わせて進化をしてきたわけです。

こうした生物種特有の知覚をドイツの生物学者のヤーコプ・フォン・ユクスキュルが環世界という学問にしています。「Digital to Natural」とは,こうした人がまだ使っていない価値観を上手く使っていくことで,新しい価値観を生み出せるのでは,という提案です。

例えばコネクティッドカーを考えた時,4Kや8Kで高精細に道路の映像を撮るのがいいのか,それとも,瞬時に障害物や路面の凍結を判別できる方が重要なのか。そういうこともこれまでにない価値観が必要です。

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