─なぜ,自分達で2光子顕微鏡を作るのですか?
私はポストドクターだった時,2光子顕微鏡の発明者と一緒に仕事をした経験を持っています。自分達で作る事で,我々のイメージングアプリケーションに最適化する事ができるので,市場に出ているものより我々が作った2光子顕微鏡の方が優れていると思います。なぜならメーカー製のものは様々な用途に使用できるように作られていて,応用範囲が広いのです。我々は設計を自分たちの用途に合わせて調整・変更可能ですし,自作すれば光学部品もそれぞれのメーカーから我々の目的に最適なものを選ぶことが可能なのです。実際,我々の顕微鏡に使われている部品のメーカーは,Leica,Olympus,Nikon,Zeiss,Hamamatsu等,多岐にわたっています。
私は研究室の2光子顕微鏡の性能を常に向上させるという,ある種のチーフエンジニアとしての役割も担っています。一方で生物学の研究者は,この技術をどの様に使うのか有益なアイデアを持っています。これらの二つの分野の協業がイメージング技術を使った最適な結果を生み出す事につながっています。この事も2光子顕微鏡を自作する目的の一つです。
─OISTは大都市から離れていますが,必要なものはどの様にして調達していますか?
ネットで購入する事が多いのでしょうか?
はい。ネットで注文することも多いです。しかし,メンテンナスを含めてベンダーや商社はよくOISTに来ています。光学機器メーカーも定常的に訪問してくれています。
確かにOISTはベンダーの所在地から非常に離れていますが,購入後のサポートについては面白い方法をとっている例があります。大変に高額な機器,例えばレーザーなどを購入した時は,当然メンテナンスを含めたサービス契約を結びます。実際にはどの様に対応するかというと,まず,ベンダーの営業所からその装置にリモートアクセスできる様にします。何か不具合があったときは,装置をインターネット経由でベンダーがオンライン検査することで,どの部品が故障しているのか,離れているベンダーの事務所で特定できるのです。その上で,必要に応じて東京からエンジニアが派遣されてきます。こうして最近では,ベンダーの在る場所から離れていても便利にサービスが維持できる様になっているのです。
─国内の大学や研究機関と共同研究を行なうことはありますか?
もちろんです。実際に日本の幾つかの大学とは緊密に連携しています。連携先の規模についても,東京大学のような大規模の大学や埼玉大学のような中規模の大学とも連携しています。地方の大学とも協業していて,例えば四国の徳島文理大学や北海道大学にも良き協力者がいますし,奈良先端科学技術大学院大学,福島医科大学などとも緊密な関係があります。
研究機関も同様で,例えば理化学研究所脳神経科学研究センターと関係を持っています。実例を挙げれば,Japanese Bio Optics Meetingという学会が9月に宮崎で行なわれました。私自身がそこで徳島文理大学の教授と共同でシンポジウムを主催して理化学研究所脳神経科学研究センター,北海道大学,ウッズホール海洋生物学研究所から日本人の研究者を招待して講演してもらいました。