─主にどういったお客さんがいますか?
(宮田)一例に眼底カメラがあります。ストロボ照明用で現在は一部LEDに取って代わっていますが,歴史の長いキセノンは今でも注文をいただいていて,多くの国内メーカーに当社の製品が入っています。キセノンでは他にもコピー機の光源ですとか,珍しいものだと脱毛器。今,大きいところではソーラーシミュレーターや,印刷画像の検査用光源などがあります。他には殺菌灯も製造しており,水の殺菌などに使われています。
昔はレーザー用の放電管も作っていてYAGレーザーに使っていただいたのですが,今はほとんど需要がありません。使っている材料がレアメタルなので国内では製造が難しいというのもあって,ここ最近は数年に一度,実験用に大学から連絡をいただくくらいです(笑)。
─LEDが増える中でキセノンが必要とされるのはどういったところですか?
(宮田)太陽光にもっとも近い光源で,且つLEDでは出せない波長域や出力というものがあります。そうした波長に対応したLEDも現在,研究開発されていますが,出力に圧倒的な差があります。たとえば海上の灯浮標にキセノン球が使われていますが,キセノン球は数キロ先でも光が届くのに対し,同じサイズのLEDでは届きません。キセノンとLEDではそれぞれ利点も特徴も異なるので,利用目的によって今後も住み分けられていくと考えています。
─それで「はやぶさ2」にも採用されたのですね
(宮田)そうです。「はやぶさ2」では小惑星「りゅうぐう」の上空からキセノンランプを発光させています。降下地点の目印となるターゲットマーカーを落としてそこからの反射光を拾うのですが,発光装置自体が非常に小さくLEDでは光量が足りないので,キセノンランプが採用されているわけです。
(西森)実際にはこのランプを二本光らせて,最初にターゲットマーカーを探します。レーダーやレーザーだとちょっと遠すぎるので,これが最初に使われるということです。反射光を拾った「はやぶさ2」はそこに向かって降下していき,ある程度の高度まできたら,今度はレーダーやレーザーを使って,数センチの精度で降下していきます。