4. 様々な対象での実験
4.1 光沢物の検査
提案手法の有効性を検証するため,まず金属光沢表面を対象とした検査実験を実施した。滑らかなステンレス平板に対し,点キズ,線キズ,擦れキズを人工的に作成した。キズを付加したステンレス板における異常検出の結果を図5に示す。図中の枠線は異常候補領域を表しており,全種類の異常タイプを検出できることを確認した。実験においては,ステンレス板を移動ステージ上に載せて一定速度で移動させた場合や,手動で不規則に動かした場合においてもキズを検出できることを確認した。

金属以外の材料として,黒色アクリル平板を用いた検査実験も実施した(図6)。アクリル等の樹脂表面は,一般に滑らかで光沢を持つ特性がある。また,黒色物体は輝度レベルが低いため,通常のカメラによる外観検査が困難という課題を抱えている。この黒色アクリル板に対し,点キズと線キズを付加したところ,本システムによってそれら全種類の異常タイプを検出できることを確認した。

続いて,プラスチック樹脂にメッキ処理を施したドアノブを検査対象とした際の結果を図7に示す。表面に存在する線状の微細なキズを検出できることを確認した。この物体は平板形状ではなく,緩やかな曲面を持つ形状であるが,大域的な形状に起因するイベント群の特徴と,キズのような局所的な微小形状に起因するイベント群の特徴との相違により区別が可能となっている。

4.2 透明物の検査
通常のカメラでは外観検査がより困難な透明物体を対象とした検査実験を実施した。まず,透明アクリル平板に対し,人工的に作成した点キズと線キズの検出を検証した(図6)。光沢物と比較して,全体として発生するイベント総数は減少する傾向が見られたが,異常箇所の検出およびトラッキングは可能であることが分かった。
さらに,透明物体内部に含まれる気泡の検出や,透明物体の裏面に存在するキズの検出なども可能であることを確認した。
4.3 高速移動物体の検査
インライン検査への実装に向けて重要となる移動物体の検査実験も実施した。ステンレス円板の表面に打痕として点キズを作成し,DCモーターで回転させることにより,検査対象を時速20 km相当の速度で移動させた(図8)。極めて高速で移動する対象物であるにもかかわらず,本システムでは点キズの検出とトラッキングが実現できることを確認した。なお,イベント自体は1 μsの時間分解能で取得されているため,検出結果の可視化手段として,例えば1,000~10,000 fpsの動画として構成することも可能である。
